フリーストール方式の酪農経営における飼養管理労働時間と労働収益性
[要約]フリーストール方式の酪農経営において、労働力1人当たりの経産牛頭数が35〜45頭であれば、年間飼養管理労働時間は2,000時間である。また、労働時間当たりの差益(乳代一購入飼料費)は、繋ぎ飼い方式の優良経営に比べて2〜3倍高い。しかし、規模拡大に見合った労働時間の短縮が達成されないと、経産牛1頭1時間当たりの差益は大幅に低くなる。
畜産研究所・大家畜部・乳牛研究室[連絡先]092−925−5231
[部会名]畜産 [専門]飼育管理[対象]家畜類 [分類]指導
[背景・ねらい]
酪農経営においては乳価の低迷や後継者難に対する方策として、フリーストール方式の導入により規模拡大を進めるとともに労働環境を改善しようとする経営が増加している。しかし、労働力に応じた適正規模および収益性等に関しての経営技術指標は確立されていない。そこで、県内のフリーストール方式の経営実態を調査し、飼養規模別の労働時間および労働収益性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1 飼養管理に係る1日の総労働時間は、8時間から19時間であり、経産牛頭数規模が大きくなるに従って直線的に増加する(表1、図1)。
2 労働力1人当たりの年間の飼養管理労働時間は、経産牛頭数が35頭未満の経営では、1,600時間以下であるが、35〜45頭の経営ては2,000時間に達している(表1、図2)。
3 経産牛1頭当たりの差益(乳代一購入飼料費)は、繋ぎ飼い方式の県内優良経営(以下、繋ぎ経営)に比べて少ない。しかし、労働時間当たり差益は、経産牛1頭当たりの管理労働時間の短縮により、2〜3倍高くなる(表2)。
4 経産牛120〜150頭に規模拡大した経営てば、規模拡大に見合った労働時間の短絡が達成されないと、経産牛1頭1時間当たりの差益は大幅に低くなる。そこで、繋ぎ経営と同等の差益を得るには、現状の管理労働時間(51〜45時間)を25〜30%短縮する必要がある(表1,2)。
[成果の活用面・留意点]
1 フリーストール方式の導入に当たって、経営内労働力に応じた飼養規模および作業体系を検討する場合の資料として活用できる。
2 経産牛1頭1時間当たりの差益が低い場合は次のことが考えられる。
@飼養管理の粗放化および購入飼料依存により差益が減少している。A施設や作業体系の省力化に改善の余地があり、規模拡大に見合った労働時間の短縮が図られていない。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:大規模土地利用型酪農の存立条件の解明
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成9年度(平成8〜9年)
研究担当者:古賀康弘、磯崎良寛、柿原孝彦、原田美奈子
発表論文等:平成9年度畜産関係試験成績書