乳牛における飼養環境の変化が泌乳性に与える影響

[要約]繋留方式からフリ−バ−ン方式、フリ−バ−ン方式からフリーストール方式への飼養環境の変化により、一時的に泌乳量が減少するが、5〜10日で元の乳量まで回復する。また、フリ−スト−ルへの順応が速い乳牛には泌乳量の減少は見られないが、順応が遅れる乳牛は概して生後月齢が進んでおり、これらの乳牛では泌乳量の減少傾向が大きい。

畜産研究所・大家畜部・乳牛研究室 [連絡先] 092-925-5231
[部会名]畜 産 [専 門]飼育管理 [対象]家畜類 [分類 指導

[背景・ねらい]

乳牛の飼養環境が繋留方式から群飼方式(フリ−バ−ン方式、フリーストール方式)に変化した場合、環境の変化等により泌乳性に悪影響を及ぼすことが考えられる。
そこで、飼養環境の変化が泌乳性へ及ぼす影響を明らかにし、群飼方式による牛群管理技術の参考とする。

[成果の内容・特徴]
@繋留方式からフリ−バ−ン方式に移転した場合、移転3日目の泌乳量は移転前の約78%に低下し、その後回復するまでに10日を要した。

フリ−バ−ン方式からフリ−スト−ル方式に移転した場合、泌乳量の低下は約90%にとどまり、その後5日目には移転前と同水準にまで回復し、前者に比較して低下傾向は小さく、フリーバーン方式において群飼に馴れていたことが泌乳量低下の軽減につながったと考えられる(図1)。

Aフリ−バ−ン方式からフリ−スト−ル方式へ移転した後のスト−ルの利用状況では、搾乳牛20頭のうち移転翌日までにスト−ルを利用した乳牛は3頭(15%)、2日目に利用した乳牛は13頭(65%)、3〜4日を要した乳牛は3頭(15%)であった。なお、1頭はその後もスト−ルを利用しなかった。

Bストール利用の遅速と生後月齢との間には密接な関係があり、月齢が進んだ乳牛ほどストール利用が遅い。ストールを速やかに利用している乳牛では泌乳量の低下は見られず、ストールを利用するのが遅滞する乳牛ほど泌乳量の低下傾向が大きい。スト−ル利用に3〜4日を要した乳牛は、移転翌日には約30%低下し、泌乳量水準の回復に5日を要した(表1)。

[成果の活用面と留意点]
@群飼方式導入に当たっての指導資料として活用する。
A繋留方式から群飼方式へ移転する場合、放飼場等を利用してあらかじめ群飼に馴れさせる。
B群飼方式において乳牛を導入する場合は、順応が速い未経産牛を主体とする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:低コスト飼料生産技術及びフリーストール牛群管理システム
予算区分:国庫(地域基幹農業)
研究期間:平成8年度(平成6〜10年)
研究担当者:上田允祥、山下克之、柿原孝彦、小島雄次、古賀康弘
研究論文等:平成8年度畜産研究所試験成績書