組織培養で増殖したカラタチ「ヒリュウ」の畑土壌を使った簡易な挿木法
[要約]組織培養で増殖したカラタチ「ヒリュウ」では、多芽体を、BA0.3ppmのMT培地に継代して約10mm以上になったシュートを、IBAの粉末で塗布処理し、滅菌した畑土壌に挿木すると活着、生育が良い。
果樹苗木分場・無病菌育成研究室 [連絡先]09437−2−2243
[部会名]園芸 [専門]栽培 [対象]果樹類 [分類]普及
[背景・ねらい]
カラタチの1系統でわい化効果の高い「ヒリュウ」は、台木に用いると果実品質も向上することから近年注目を集めている。しかし、「ヒリュウ」を実生で育成すると変異の出現率が高いという問題がある。そこで、均一で優れた台木を効率的に増殖するために、組織培養を用いた簡易な挿木法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1 挿穂として用いるシュートが長いほど根の数が多く、伸長も良い(表1)。
2 冬芽体をBA濃度が0.3ppmの培地に継代すると、挿木に適した10mm以上のシュートが多く得られる(表2)。
3 発根促進のためのIBA処理効果は、150ppm水溶液剤と1%粉剤処理との間で差が無いので、作業が容易な1%の粉剤の塗布処理がよい(表3)。
4 減菌処理した水田土壌、畑土壌ともに発根率が高く根数も多く、根の伸長はUCソイルよりもやや劣るものの実用的な問題はない(表4)。しかし、水田土壌の方が保水力が強く移植作業が困難になる(データ略)。
5 挿木床での活着率はUCソイルと畑土壌の聞に差は無いが(表5)、活着後の生育は畑土壌が良い(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
1 保温設備の有るハウスでは挿木を周年行うことができるが、無い場合は生育に適した温度と年内の生育量を確保するため、4〜6月位までに完了することが望ましい。
2 挿木終了後は直ちにビニルフィルムで保湿し、高温を避けるために寒冷紗等で遮光する。
3 活着後はビニルフィルムを徐々に除去して順化後に肥培管理する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:カンキツ苗木育成技術の改善
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:能塚一億、鶴丈利
発表論文等:平成7〜9年度果樹苗木分場試験成績書