イチジク果実の成熟期における肥大機構と水管理

[要約]イチジクの果実は、成熟に伴って水溶性ペクチン質が急増するとともに不溶性細胞壁成分の保水能が高まることにより、急激に水分を吸収して肥大する。成熟期の土壌水分をpF値2.4前後で管理して土壌が乾燥すると、pF値2.0以下の場合に比べて果実内の水分含量が減少し、果重が小さくなるが糖度は高まる。


豊前分場・果樹研究室 [連絡先]09302−3−0163
[部会名]園芸 [専門]栽培 [対象]果樹類 [分類]指導


[背景・ねらい]

イチジクの果実は成熟時に水分を急激に吸収しながら肥大するため、肥大促進にはかん水などの水管理が重要となる。しかし、水分吸収による果実肥大の機構はこれまで解明されておらず、土壌水分との関係も明らかになっていない。イチジクの果実は成熟時に細胞が肥大せず、細胞壁や細胞間隙の拡大が顕著であることがこれまで明らかにされている。イチジク果実の細胞壁にはペクチン質やセルロースなどが多く含まれており、これらの成分は水を吸収して膨潤する性質がある。そこでイチジク果実の肥大機構を解明するため、成熟期の水分含量の変化と細胞壁成分との関係を明らかにし、土壌水分の影響についても検討する。

[成果の内容・特徴]

1 イチジクの果実は成熟に伴って水分含量と果重が急激に増加し、同時に水溶性ペクチン質含量が急増する。水溶性ペクチン質含量と果重との間には極めて高い相関関係が認められる(図1、図2、表1)。
2 イチジク果実の不溶性細胞壁成分の成熟に伴う含量の変化は比較的小さく、保水能と膨潤能が高まる(表1)。
3 成熟期の土壌水分をph2.4前後で管理して土壌が乾燥すると、pF値2.0以下の場合に比べて果実の水分含量が減少し、果重が小さくなるが糖度は高くなる(表2、図3)。

[成果の活用面・留意点]

1 イチジクの水管理の参考資料として活用する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:果実品質の変動要因の解明
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成8〜12年)
研究担当者:矢羽田第二郎、野方仁、粟村光男
発表論文等:イチジク果実の細胞壁成分の品種間差異と成熟過程における変化、園芸学会雑誌、第65巻第1号、1996イチジク果実の肥大・成熟に伴う小果、果托内の細胞壁成分の変化、園芸学会雑誌、第65巻別冊2.1996