温州ミカンの有機酸組成に及ぼす品種、地域およびフイルムによる土壌水分制御の影響

[要約]温州ミカンのリンゴ酸率は、成熟とともに低下し、再度上昇するが成熱の早い品種や地域では低下が早い。フィルムで土壌水分を制御するとリンゴ酸率の低下が遅くなり、収穫時の有機酸濃度が高くなる。


園芸研究所・果樹部・常緑果樹研究室 [連絡先]092−922−4111
[部会名]園芸 [専門]栽培 [対象]果樹類 [分類]指導


[背景・ねらい]

温州ミカンの有機酸濃度および組成は食味に強く影響を及ぼしているため、これらの成熟にともなう消長と組成変化を把握することは品質を予測するうえで重要である。有機酸組成、中でもリンゴ酸率(リンゴ酸÷(クエン酸十リンゴ酸)×100)の転換期が果実成熟の進行に関係があることが示唆されているが、この時期を明確にすることで、品質予測、熟期の判定が可能になる。そこで、熟期の異なる極早生種、早生種、普通種を用いて、成熟の早い大牟田市と遅い筑紫野市で、さらにフィルムで土壌水分を制御し、これらが有機酸組成に及ぼす影響を明らかにし、熟期判定の資とする。

[成果の内容・特徴]

1 リンゴ酸率は、成熟の早い品種の順に低下が早く、また、最も低い値を示す時期が早い。同様に、成熟の早い大牟田市では筑紫野市より低下が早く、また、最も低い値を示す時期が早い(表1)。
2 フイルムで土壌水分制御を行うと、クエン酸濃度が減少しにくく、リンゴ酸濃度の減少が遅くまで続き、リンゴ酸率は最も低い値を示す時期が遅くなる。その結果、収穫期の有機酸濃度が高くなる(表2、一部データ略)。
3 クエン酸濃度およびリンゴ酸濃度は、極早生種の「山川早生」、早生種の「興津早生」、普通種の「青島温州」の順に減少が早い。同様に成熱の早い大牟田市では筑紫野市より減少が早い(データ略)。

[成果の活用面・留意点]

1 地域における温州ミカンの品種選択および品質予測の資料とする。
2 温州ミカンの熟期の判断の資料とする。



[その他]
研究課題名:カンキツ果実品質の時期的変化
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成5〜9年)
研究担当者:桑原実、堀江裕一郎、角利明
発表論文等:平成5〜9年度果樹関係試験成績書