アイノキクイムシによるイチジク株枯病菌の媒介

[要約]主幹地際部が健全なイチジク樹の主枝付傷部に突然発生するイチジク株枯病は、鞘翅に株枯病菌を保菌したアイノキクイムシ(Xyleborus interjectus)によって媒介されたものである。

生産環境研究所・病害虫部・果樹病害虫研究室[連絡先]092−924−2938
[部会名]園芸 [専門]作物病害 [対象]果樹類[分類]指導

[背景・ねらい]

イチジク株枯病(病原菌:Ceratocystis fimbriata)は、雨媒、風媒及び土壌伝染性の病害とされている。しかしながら、近年、県内のハウス栽培のイチジクにおいて、地表から約1〜2m上方の主枝に発生する事例が報告されていることから、前述の伝染法以外の経路で感染している可能性が指摘されている。海外では、キクイムシ類の一種が、本菌と同属のニレ立枯病菌(Ceratocystis ulmi)を媒介するとの報告がある。そこで、イチジク株枯病の罹病部で頻繁に観察されるアイノキクイムシ(Xyleborus interjectus)成虫による本菌媒介の可能性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 ハウス栽培のイチジクで、主幹地際部が健全な樹の主枝に株枯病が発生し、内部が褐変する事例が認められる(表1)。
2 罹病部には、養菌性キクイムシ類の一種であるアイノキクイムシが多数生息している(データ省略)。
3 罹病樹より採集したアイノキクイムシ成虫は、主として鞘翅に株枯病菌を保菌している(表2)。
4 罹病樹より採集したアイノキクイムシ成虫をイチジク幼木に接種すると、接種部に株枯病の病徴が再現される(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1 アイノキクイムシの防除によるイチジク株枯病の広域伝播防止のための基礎資料に利用する。
2 本病については、アイノキクイムシによる伝染ばかりでなく、雨媒、風媒及び土壌伝染も行うので、栽培に際してはこれらの点に留意する。
3 株枯病菌を保菌したアイノキクイムシは、イチジク主枝の付傷部に誘引され穿孔するので、棚栽培等の主枝に傷がつきにくい栽培法を行う。

[その他]
研究課題名:イチジク株枯病の主要な伝染法の解明及び防除法の確立
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成8〜12年)
研究担当者:梶谷裕二、大平善男
発表論文等:平成8〜9年度福岡県農業総合試験場病害虫部果樹病害虫関係試験成績概要書