カキの開花期の降ひょうが着果及び果実品質に及ぼす影響

[要約]開花期にひょう害を受けたカキ樹は生理落果が助長され、葉及び果実の損傷程度が激しい樹ほど被害後の落果が多く、着果数が少なくなる。また、落果しないで残った果実もヘタの発育が抑制され、果実肥大が悪く、着色が劣る。

園芸研究所・果樹部・落葉果樹研究室 [連絡先] 092-922-4111
[部会名]園 芸 「専門]栽 培 [対象]果樹類[分類]指導

[背景・ねらい]

平成8年5月22日午前1時20分から約10分間、浮羽郡の耳納山麓から筑後川にかけての一帯に直径約2〜3pのひょうが降り、カキやブドウ等多くの果樹が被害を受けた。これまで当地域では果樹に対するひょう害が度々発生したが、カキのひょう害に対する報告事例がほとんどなく、被害の実態は不明である。そこで、カキのひょう害が激しかった吉井町内の被害程度の異なる平坦部、山麓部2地区のカキ園の被害の実態を調査し、今後の指導資料とする。

[成果の内容・特徴]
@A園は吉井町内でもひょう害が最も激しい平坦地区に位置し、B園はひょう害が比較的軽い標高約 100mの山麓地区に位置するカキ園である。
A降ひょうによる葉の被害程度は地区によって異なり、同一地区内でも風向き、遮へい物の有無等で多少異なる。降ひょうで欠落した葉が30%を超えた樹では果実(花蕾)への被害程度も大きい(表1)。なお、降ひょう当日が被害地区の開花始期に当たり、果実(花蕾)へのひょう害は果梗からヘタ部に集中した。
B開花期のひょう害によって、落果開始は平常の生理落果より早い被害直後(満開期)から始まり、終了時期は平常の生理落果より遅い満開後40日頃となる。また、ひょう害程度の大きい樹では落果が多く、最終着果率及び着果数は少なくなる(図1、表2)。
C開花期にひょう害を受けた樹ではヘタの発育が悪く、果実肥大が著しく抑制されるが、反面ヘタスキ果の発生はほとんどない。また、被害樹では果実の着色が悪く、成熟期の果皮色は無被害樹より劣るが、糖度への影響は少ない(表2、図2)。

[成果の活用面・留意点]
@開花期の降ひょうによる被害樹の被害実態を把握するのに活用する。
A被害樹は、落果が終息するのを待って被害程度に応じて被害果を摘果する。
B被害樹の病害を防ぐため、直後の防除を徹底する。
[具体的データ]

[その他]

研究課題名:カキの結実及び果実品質に及ぼす降ひょうの影響
予算区分:経常
研究期間:平成8年度
研究担当者:林 公彦、牛島孝策、千々和浩幸
発表論文等:平成8年度果樹関係試験成績書