[要約]
梅雨期の降水量の多い年は、モモに収穫前20日間透湿性シートをマルチすると、土壌水分が減少し、果実糖度が上昇する。また、シートの反射光により着色も促進される。
園芸研究所果樹部落葉果樹研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園芸
[専門] 栽培
[対象] 果樹類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
モモは収穫期が梅雨期と重なり、多雨による土壌水分の過多や日照不足により、果実品質が低下しやすい。現在、着色促進のためにシルバーシートを用いているが、土壌水分制御は行われていない。そこで、マルチ資材を用いて収穫前の土壌水分制御を行い、果実品質の向上および定化技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
@土壌水分は、収穫前の透湿性シートをマルチすることによって減少する(図1、2)。
A土壌水分の減少速度は、マルチした透湿性シートを晴天日に開き、降雨日に閉めることで早くなる(図1)。しかし、成熟期の降水量が少ない年は、糖度及び着色の向上効果は少ない(表1)。
B成熟期の降水量が多い年は、透湿性シートを収穫前20日間マルチすることにより、土壌水分制御が可能となり、果実糖度及び着色は上昇する(図2、表2)。
C成熟期の降水量が多い年は、透湿性シートを収穫前10〜20日間マルチすることで、シートの反射光により着色が促進される(表2)。
[成果の活用面・留意点]
@モモのマルチ栽培技術資料として活用する。
Aマルチは、土壌の乾いた状態で処理する。B透湿性シートは、経済性を考慮して2〜3年使用する。
[具体的データ]
図1 少雨年(平成6年)の降水量とマルチ処理 図2 多雨年(平成5年)の降水量とマルチ処理
による土壌水分(PF)の変化 による土壌水分(PF)の変化
表1 マルチの処理方法と果実品質(平成6年) 表2マルチの処理期間と果実品質(平成5年)
注)@品種:八幡白鳳 S63年栽植 1区1樹2反復
A試験区:マルチ開閉:被覆期間中(収穫前34日間)、晴天日にマルチを開き、雨天日に閉じる。
マルチ慣行:収穫前34日間連続してマルチ被覆。
20日間マルチ:6/21〜収穫まで20日間マルチ被覆。
10日間マルチ:7/1〜収穫まで10日間マルチ被覆。
Bマルチ資材:タイベックを用い全面被覆。
C着色:1:果皮着色面20%以下 2:21〜40% 3:41〜60% 4:61〜80% 5:81〜100%
D肥大率:H6年は6/15〜7/7の間、H5年は6/10〜7/8の間の横径の肥大率。
E異なるアルファベット間ではシェッフェの多重検定で有意差あり(5%)。
F供試果実:H6年は7月7,11,14日に、H5年は7月8,12,15日に収穫し全果を供試。
[その他]
研究課題名:モモのマルチ栽培
予算 区分 :経常
研究 期間 :平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:牛島孝策、林公彦、千々和浩幸、恒遠正彦、姫野周二、吉永文浩
発表論文等:平成4〜6年度果樹関係試験成績書