[要約]
施設栽培で根域制限を行った温州ミカンの樹体が受ける水分ストレスは着果程度によって異なる。着果量が少ない葉果比15では、着果量の多い葉果比10に比較して樹体の水分ストレスが強くなり、果実の糖度は高まるが、果実の肥大は劣り、収量が少なくなる。
園芸研究所果樹部常緑果樹研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園芸
[専門] 栽培
[対象] 果樹類
[分類] 指導
[背景・ねらい]
温州ミカンの施設栽培では、果実の肥大期から成熟期にかけて土壌水分を制限して果実品質を向上させるが、樹体の受ける水分ストレスは施設の環境や栽培条件により異なる。特に、根域制限した栽培では根からの水分供給が限定されることから、果実と樹体との水分競合が起こり竄いと考えられる。このため、根域を制限された樹体において着果負担が生育や果実品質に及ぼす影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@果重は葉10枚に 1果の割合で結実させた葉果比10の果実が葉15枚に 1果の割合で結実させた葉果比15より大きく、収量も30〜40%多い。糖度とクエン酸は葉果比15の樹で高くなりやすい(表1)。
A根域制限を行った樹体では、葉果比15の樹は葉果比10に比較して葉水分ポテンシャルが低く推移し、樹体は強い水分ストレス状態となる(図1、2)。
B収穫後の樹体内の炭水化物は、結果枝の糖含量が葉果比10の樹で少ないが、デンプン含量や細根の炭水化物含量には着果程度による差がなく、
7月せん定後の生育にも差はない(データ略)。また、12月加温後の発育枝の発生及び着花量に対する着果程度の影響も少ない(表2)。
[成果の活用面・留意点]
@根域制限した温州ミカンの施設栽培における樹勢維持と品質向上のための結実管理指導に活用する。
A樹体が水分ストレスを受けやすい夏季高温時期はかん水量や回数を多めとする。
[具体的デ−タ]
注)@品種は12月上旬に加温開始した施設栽培の「宮川早生」15年生(平成4年)
A着果程度の葉果比15は葉15枚に1果の割合、葉果比10は葉10枚に1果の割含で結実させた。
B根域は幅2m、裁植間隔4m、深さ20p、1樹当たり土量1,800L
C果実品質の調査日は平成4年7月13日、5年7月12日
DNS、*、**はt検定による有意性を示す。
図1 着果程度と葉水分ポテンシャルの日変化 図2 着果程度と葉水分ポテンシャルの日変化
(平成5年6月3日、晴天日) (平成5年6月8日、曇天日)
注)NSはt検定による有意性を示す。
[その他]
研究課題名:根域制限による生育制御
予算 区分 :経常
研究 期間:平成 6年度(平成 2〜 6年)
研究担当者:矢羽田第二郎、大庭義材、桑原実、野方 仁
発表論文等:平成4〜5年度常緑果樹試験研究成績概要集(農水省果樹試編)、平成4〜5年度果樹関係試験成績書園芸学会雑誌、第63号 第4号