温州ミカンの施設栽培における根域制限程度と果実の収量及び品質


[要約] 
 温州ミカンの施設栽培で根域制限を行う場合、根域の土量を少なくするほど土壌が乾燥しやすく、果実の糖度は高まるが、果実の肥大が劣って収量が少ない。糖度12〜13度の果実を安定生産するためには、樹齢10年までの若い樹では 1樹当たり土量600ι程度にすると良い。

園芸研究所果樹部常緑果樹研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名 ] 園芸
[専門]    栽培
[対象]   果樹類
[分類]   指導


[背景・ねらい]  
 温州ミカンの施設栽培では、果実の肥大期から成熟期にかけて土壌水分を制限して果実品質を向上させる。しかし、長期間の土壌乾燥処理は、樹勢の衰弱を招きやすい。また、逆に、根群分布が深くなった場合には、土壌水分の制御が困難になって、果実品質の調節が容易でない。の対策として防根透水シートを利用して根域を制限する栽培が期待できることから、根域制限程度が土壌水分や果実の収量、品質に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@果実の収量は、 1樹当たり土量が多いほど多く、土量600ι(幅2×1m、深さ30cm)の 4カ年累積収量は 1樹当たり54.4kgで土量180ι(幅60cm×1m、深さ30cm)の場合のおよそ2倍となる(図 1)。

A収穫果実は、 1樹当たり土量が少ないほど着色程度が高いが、果皮色が薄く、果重が小さい。糖度は 1樹当たり土量が少ないほど高いが、土量 600ιも12度を超えて高い。クエン酸は土量600ιでやや低い(表 2)。

B収穫果の階級別割合は、 1樹当たり土量が多いほど2S級の小果の割合が低く、土量600ιではM、S級果が主体となる(図 2)。

C土壌のpF値は、 1樹当たり土量が少ないほど高く推移し、土量180ιではpF値が3.4前後と高く、過乾燥となりやすい(図 3)。

[成果の活用面 ・留意点]
@温州ミカンの施設栽培で高品質果実を生産するための根域制限方法の指導に活用する。

A根域制限用のシートは耐久性に優れ、根を通さないものを利用する。

B樹冠の拡大(樹齢)に伴って、間伐を実施して 1樹当たりの土量を増量できるよう畝ごとの根域制限を行う。


[具体的デ−タ]


 注)@根域制限は防根透水シート使用
   A土壌は花こう岩砂壌土
   B品種は「山下紅早生」、平成2年に5年生樹を栽植
   C加温は毎年1月下旬開始




  図1 根城制限程度と果実の4ヵ年累積収量



 注)@果皮色はカラーチャート指数
   A浮皮程度は軽(1)、中(2)、甚(3)に区分して調査した。



  図2根域制限程度と果実の階級別割合(平成3年)       図3根域制限程度度と土壌水分の変化(平成5年)


[その他]
研究課題名:温州ミカンの施設栽培における高品質果実の多収生産技術
予算 区分:経常
研究 期間:平成 6年度(平成 2〜 6年) 
研究担当者:矢羽田第二郎、大庭義材、桑原実、野方 仁
発表論文等:平成3〜6年度 常緑果樹試験研究成績概要集(農水省果樹試編)平成3〜6年度 果樹関係試験成績書福岡県農業総合試験場研究報告B(園芸)第12号園芸学会雑誌第61巻別冊 2 園芸学会雑誌第63巻別冊 1