[要約]
着色・外観良好な、赤色系・早熟性の四倍体生食用ブドウ「福岡7号」(陽峰)を育成した。
園芸研究所・果樹部・果樹品種研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園芸
[専門] 育種
[対象] 果樹類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
温暖多雨地帯における施設生食用ブドウ品種として、耐病性を有し、早熟でかつ赤色系の大粒の多収性品種の作出が求められている。
このような品種を作出するための交配母本を選定し、交雑実生から選抜育成する。
[成果の内容・特徴]
@昭和50年「巨峰」を母本に「アーリー・ナイアベル」を父本として交配を行い昭和61年に一次選抜し、平成元年ブドウ第6回系統適応性検定試験に供した(表1)。
A樹勢は中〜やや強で(表2)、テレキ5BB台ではほとんど台負けは見られない。新梢の伸びは「キャンベル・アーリー」よりやや旺盛であるが、「巨峰」より劣り、樹冠の広がりは「巨峰」よりも小さい(データ略)。
B果房は円筒形で、花振るい性は中程度。着粒は粗〜中程度で比較的強い新梢に良く結実する(表2、一部データ略)。
C果粒の形は円〜短楕円。果皮色は着色良好な赤色で、平均果粒重8.3g。糖度17.5%で巨峰並み、酸度は0.61%と中位で、フォクシー香を有し、果肉は塊状でやや軟らかいが、剥皮性が容易で食味良好である(表2)。
D果皮は比較的厚く、裂果はほとんど見られず、果実の日持ちは中位である(表2、一部データ略)。
E熟期は育成地で8月中旬〜下旬であり、「キャンベル・アーリー」よりやや遅く、「巨峰」よりやや早い早熟性品種である(表2)。
F施設での通常管理ではこれまで目立った病害の発生はなく、生理障害もみられない(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
@新品種(農林)命名登録は現在申請中である。
A早熟で、外観良好な赤色系ブドウ品種として普及することが見込まれる。
B四倍体ブドウとしては樹勢が中位で、生育の良い新梢に良果を生産する傾向が見られるため、強めの新梢が発生するような剪定や肥培管理を行う。
[具体的データ]
表1 育成経過
表2 陽峰と対象品種との果実特性の比較
[その他]
研究課題名:施設ブドウ育種試験
予算 区分:国庫(指定試験)
研究 期間:平成6年度(昭和49〜平成6年)
研究担当者:鈴木勝征、能塚一徳、井樋昭宏
発表論文等:平成2〜5年度果樹関係試験成績書