ブドウ品種「宝満」、「博多ホワイト」、「翠峰」及び「陽峰」の加温栽培における果実品質


[要約]
 ブドウ品種「宝満」、「博多ホワイト」は加温栽培でもトンネル栽培と同様の果実品質となる。「宝満」は作型にかかわらず裂果の発生が多い。「翠峰」は7月上中旬収穫となる2月加温 栽培で裂果の発生がみられるので収穫期が梅雨期にかからない作型を選ぶ。「陽峰」は加温栽培 では果粒重の年次間差が小さく、糖度が高くなる。

園芸研究所・果樹部・果樹品種研究室    [連絡先]092-922-4111
[部会名]園  芸   [専門]栽培   [対象]果樹類 [分類]指導
 
[背景・ねらい]
福岡県で施設栽培向けの品種として育成したブドウ品種「宝満」、「博多ホワイト」、「翠峰」及び「陽峰」は消費の多様化への対応や経営改善のために導入する品種として有望視されている。しかし、これら品種の品質が作型によってどのように異なるかは明らかでない。このため、トンネル栽培を対照として、加温栽培での果実品質の違いを明らかにする。
 
[成果の内容・特徴]
 1 「宝満」は加温栽培でもトンネル栽培と同様の果実品質となる。また、作型に関わりなく裂果の発生が多い(表1)。
 2 「博多ホワイト」は加温栽培でもトンネル栽培と同様の果実品質となる。加温栽培では特に果粒重が毎年安定している。また、欧州系品種で問題となりやすい裂果はほとんど発生しない(表1)。
 3 「翠峰」は加温栽培でもトンネル栽培と同様の果実品質となる。裂果は、7月上中旬収穫となる2月加温栽培では多発する年があるため、収穫期が梅雨期にかからない作型を選ぶ必要がある(表1)。
 4 「陽峰」は加温栽培で糖度が高くなる。また、果粒重は加温栽培では安定しているが、トンネル栽培では年による差が大きい(表1)。
 
[成果の活用面・留意点]
1 本県で育成したブドウ品種の普及のための指導資料とする
2 「宝満」は過熟になると裂果の発生が多くなるので収穫が遅れないよう注意する。
3 「宝満」は収穫直前の降雨によっても裂果が発生するので、収穫の約2週間前からビニル等によるマルチを行う。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:新品種「宝満」、「博多ホワイト」、「翠峰」及び「陽峰」の栽培技術の確立
 予算区分:経常
 研究期間:平成10年度(平成5〜10年)
 研究担当者:平川信之、白石美樹夫、井樋昭宏、粟村光男、鈴木勝征、能塚一徳
 発表論文等:平成8〜10年度園芸研究所果樹部果樹関係試験成績書