県内に有望な中晩生カンキツの無加温ハウス栽培での特性

[要約]
 農林水産省で育成された、中晩生カンキツ西之香」は成熟期が12月と早く、食味も良い。「天香」は豊産性で、食味が良い。「はるみ」は年により収量の変動がみられるものの、果実糖度が高い。「せとか」は成熟期が 2月とやや遅いが、大果で無核である。

園芸研究所・果樹部・常緑果樹研究室  [連絡先]092-922-4111
[部会名]園芸  [専門]育種   [対象]果樹類  [分類]指導
 
[背景・ねらい]
 甘夏、八朔、イヨカン、ネーブルオレンジに代表される中晩生カンキツは、はく皮が困難で、酸が高いことなどから消費者離れが進んでいる。このため、食味が良く、産地の立地条件や販売戦略に応じた品種への更新が必要となってきている。そこで、農林水産省育成の第7回配布系統の中で登録された 4品種の無加温ハウスでの栽培特性を明らかにし、県内産地に適した優良な品種を明らかにする。(要望機関名:福岡普(H7))
 
[成果の内容・特徴]
1 「西之香」は12月に成熟するカンキツである。収量は安定しているが、樹勢はやや弱い(表1)。果皮色は赤みが強く、はく皮は容易である。果実品質は、糖度が10.9、クエン酸は0.76%、じょうのう膜が薄く、食味は良い(表2、データ一部略)。
2 「天香」は12月〜 1月に成熟する。豊産性である。樹姿がやや下垂する(表1)。はく皮は容易である。果実品質は、糖度が10.9、クエン酸は0.76%、じょうのう膜が薄く、肉質が軟らかい。多汁で食味は良い(表2、データ一部略)。
3 「はるみ」は 1月に成熟する。収量は年により変動する(表1)。はく皮は容易である。果実の糖度は12.5と高い。着果量によって果実の大きさが変動しやすい(表2、データ一部略)。
4 「せとか」は 2月に成熟する。結実は良いが樹勢はやや弱い(表1)。果実は350g前後と大果である。果皮は薄く、はく皮は容易である。果実品質は糖度で11.0、クエン酸は0.79%、無核で食味は良い(表2、データ一部略)
 
[成果の活用面・留意点]
1 福岡県におけるカンキツの品種選定の資料にするとともに、種苗登録を待って、試作品種として検討する。特に「はるみ」は隔年結果が激しいので対応策として葉果比や葉面散布等について検討する。
2 無加温ハウス(被覆期間11〜 6月)での結果である。
 
[具体的デ−タ]
 
 [その他]
  研究課題名:第 7回農林水産省育成系統適応性
  予算区分:経常 
  研究期間:平成10度(平成6〜10年) 
  研究担当者:堀江裕一郎、角利昭、松本和紀、大庭義材、繻エ実
  発表論文等:平成 6〜10年度 園芸研究所果樹部果樹関係試験成績書