野外におけるチャバネアオカメムシ合成集合フェロモン製剤の有効期

[要約]
 チャバネアオカメムシの集合ブェロモン製剤からのフェロモン蒸散量は野外の平均気温が高くなるほど増加する。製剤の有効期間は蒸散量が最も多くなる盛夏期でも約1ヵ月間持続する。冷蔵保存(2℃)中にも約0.04mg/日の蒸散が起こる。

生産環境研究所・病害虫部・果樹病害虫研究室 [連絡先]092-924-2938
[部会名]園芸  [専門]作物病害虫 [対象]果樹類 [分類]指導
 
[背景・ねらい]
 最近、チャバネアオカメムシ集合フェロモンの合成が可能となり、ポリエチレンチューブに封入したフェロモン製剤が開発された。しかしながら、製剤からのフェロモン蒸散量が不明であるため・野外における製剤の有効期間は明らかでない。そこで、気温の異なる野外条件下でフェロモン蒸散量の調査を行い、フェロモン製剤の有効期間を明らかにする。
 
[成果の内容・特徴]
1 チャバネアオカメムシ合成集合フェロモン製剤は、フェロモン30mgに紫外線吸収剤と酸化防止剤を各2%添加し、約10pのポリエチレンチューブに封入したものである。
2 低温条件で保存した製剤からも緩慢なフェロモンの蒸散が起こる。2℃で冷蔵保存した場合の日当たり蒸散量は約0.04rである(表1)。
3 設置期間中の平均気温が高くなるほどフェモモン蒸散量が増加し、平均気温(X)とフェロモンの日当たり蒸散量(Y)との間にはY=0.8059−9.562・10−2X+3.61・10-3X,の2次回帰式が成立する(図1)。年間で月平均気温の最も高い8月の観測値(行橋26.2℃〜福岡27.6℃:平年値)を基に、回帰式から求めたフェロモン蒸散量の推定値は0.78〜0.92r/日でフェロモンン製剤は盛夏期でも約1ヵ月間有効である。
 
[成果の活用面・留意点]
1 野外に設置したフェロモン製剤の交換間隔の目安に利用できる。
2 未使用のフェロモン製剤はポリ塩化ビニリデンフィルム(商品名「サランラップ」)で包み、冷暗所(2℃)で保存する。
3 紫外線の直射により有効成分が変質し、有効期間が短縮するおそれがあるので、野外に設置する場合にはフェロモン製剤の上部に紙皿などを取り付けて直射日光を遮る。
4 チャバネアオカメムシ合成集合フェロモン製剤は日本植物防疫協会を通じて購入できる。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:集合フェロモンの利用技術の確立
予算区分:国庫{指定試験)
研究期間:平成10年度(平成6年〜10年)
研究担当者:大平喜男、堤隆文
発表論文等:平成9年度生産環境研究所病書虫部果樹病害虫研究室成組概要書