ヒノキ球果に形成される口針鞘数とカメムシ類のヒノキからの離脱時期

[要約]
 果樹カメムシ類の加害によりヒノキ球果に形成きれる口針鞘は7月中下旬頃からみられ始める。口針鞘数が1果当たり25本を超えるとヒノキからカメムシ類成虫が離脱する。

生産環境研究所・病害虫部・果樹病害虫研究室 [連絡先]092-924-2938
[部会名]園芸  [専門]作物病害虫 [対象]果樹類 [分類]指導
 
[背景・ねらい]
 ヒノキ球果は、果樹カメムシ類の重要な餌植物であり、。発生源である。8月から10月にかけての果樹の被害はヒノキから離脱したカメムシ新成虫によるものであり、新成虫がヒノキから離脱する時期の予測は防除対策上重要である。ヒノキ球果は、成熟して餌として好適になると10月まで好適なままであるが、カメムシ類の吸汁により餌として不適になると新成虫がヒノキを離脱し、果樹園に飛来するといわれているが実態は明らかでない。そこで、カメムシの加害によって球果に形成される口針鞘を指標とし、成虫がヒノキを離脱する条件を明らかにする。
 
〔成果の内容・特徴]
1 口針鞘数が多い球果で飼育したチャバネアオカメムシ2齢幼虫の羽化率は無被害の球果に比べて極めて低い(表1)。また、ツヤアオカメムシも同様である{データ略〕。
2 1年を通じて球果当たり口針鞘数が25本以下であった平成7年、9年は、10月までヒノキ上の成虫数に変化はなく、ヒノキからの新成虫の離脱は認められない。また、同年はカメムシによるカキの被害も少ない(図1、表2〕。
3 平成10年は1果当たり口針鞘数が29本になった8月下旬以降、ヒノキ上のカメムシ成虫数が有意に減少し、カキの被害も多く、新成虫の離脱が示唆される{図1、表2)。4 平成8年は9月上旬に口針鞘数が25本を超えたが、新成虫数が少なかったため全期を通じて虫数に有意差がなかった。しかし、カメムシによるカキの被害が多かったことから、平成10年と同様に新成虫がヒノキから離脱したことが示唆される(図1、表2)。
 
[成果の活用面・留意点]
1 新成虫の果樹園への飛来予馴こ活用できる。
2 球果の口針鞘数は調査場所や樹によるバラツキが大きいので調査は3地点以上で実施し、1地点当たり3樹からランダムに球果を30個以上採集して調査する。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:果樹園周辺植生に拷ける生態の解明
予算区分:国庫(指定試験)
研究期間:平成10年度〔平成7山10年)
研究抱当者:堤隆文・山中正博・大平喜男
発表諭文等:平成7〜10年産生産環境研究所病害虫部果樹病害虫関係試験成績概要書