アスパラガスの大量育苗法と収量性

[要約]アスパラガスをセル成型トレイで育苗する場合、200穴、128穴の大きさのものを用いると、2〜3月播種で77日以内に茎数2本の定植苗を大量に作ることができる。育苗105日目でのセル苗定植はポット苗定植に比べて大規格品の収量がやや少ない。


八女分場・中山間地作物研究室 [連絡先]0943−42−0292
[部会名]園芸 [専門]栽培 [対象]葉茎菜類 [分類]指導


[背景・ねらい]

アスパラガスは収穫物が軽量で栽培が容易なことから県下で栽培が増加している。輸入等で供給量が増大しているにもかかわらず国内産価格は中庸のS,M,L規格品を中心に比較的安定しており、今後もこの傾向は続くものと期待されている。産地拡大を図るには大量の苗供給が不可欠であるが、これまでは地床育苗やポリポット育苗による自家大苗の定植がー般的で、大量苗供給の点で不利であった。そこで、セル成型トレイ等による小型苗の直接定植の有効性を検討し、産地拡大に資する。

[成果の内容・特徴]

1 セル成型トレイを用いると、7pポリポットに比べて、少ない1株培養土量で苗床面積当たりに大量の育苗ができる。特に200穴、128穴セルトレイでその効果が大きい(表1)。
2 アスパラガスをセル成型トレイに2〜3月に播種すると、7℃設定加温ハウスで75〜77日で茎数2本に達する。その後200〜98穴セル成型トレイでは基数増加が抑制されて定植が必要となる(図1)。
3 105日苗を定植する場合、7pポリポット苗の収量が最も多いが、50穴、200穴、128穴セル成型トレイ苗定植もこれに次いで多い。セル成型トレイ苗では7pポリポット苗に比べて2、3年生株の2L規格収量が少なく、2年生株のS,M,L規格もやや少ない。7pポリポットを除き、収量と培養土量との間に一定の傾向は見られない(表2)。

[成果の活用面・留意点]

1 福岡県アスパラガス産地育成推進協議会の栽培指針作成の参考とする。
2 播種4日前に30℃で種子を浸漬し毎日水を交換して吸水させる。育苗容器に排水良好な培養土を入れ、吸水種子を1穴1粒ずつ播種し1〜1.5p覆土する。播種後、出芽までは30℃の屋内で多湿を保つ。以上のことが出芽の斉一化と促進に必要である。
3 セル成型苗等の小型苗の定植は、茎数の増加を目安にして早めに行い、定植後の土壌水分や温度の管理を十分行うことが必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:アスパラスの簡易施設利用による多収栽培技術
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成5〜9年)
研究担当者:執行明久、成清潔、大賀康之
発表論文等:平成5〜9年度八女分場中山間地作物研究室試験成績概要書
西南暖地におけるアスパラガスの簡易施設利用による周年出荷栽培技術の開発と効率的栽培体系の確立(平成10年度県間共同試験研究成果)