高速液体クロマトグラフを用いたホウレンソウのカロテノイドおよびクロロフィルの簡易な同時分析法


[要約]ホウレンソウに含まれる色素を高速クロマトグラフで分析するには、試料のアセトン抽出液を用いると従来の精製過程を省略することができ、分析操作を簡略化できる。また、グラジエント溶出法を用いることにより、カロテノイドとクロロフィルを同時に分析できる。


園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室 [連絡先]092−922−4111
[部会名]園芸 [専門]食品品質 [対象]葉茎菜類 [分類]研究


[背景・ねらい]

ホウレンソウに含まれるカロテノイドは、ビタミンAの前駆物質であり、また最近では抗ガン作用等の働きも育することが明らかになっている。これを従来の方法で分析する際には、高速液体クロマトグラフ(以下、HPLC)での測定に至るまでの試料調製に複雑な過程を要する。そこで、試料の抽出法を簡略化するとともに、クロロフィルも同時に測定できるHPLCの条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 ホウレンソウでは、アセトン抽出液を試料調製液としてHPLCへ注入する方法は、従来の精製を伴う方法よりも簡易に試料の調製ができる。この方法では、カロテノイドおよびクロロフィルの試料調製液中合育量が従来法より高くなる(図1、表1)。
2 HPLCで分析する際の移動相を、初期条件はA=アセトニトリル:水が9:1とし、試料調製液注入後から徐々にBの酢酸エチル濃度を上げるグラジエント溶出法で最終的にA:B=50:50とすることにより・クロロフィルa・クロロフィルbおよびカロテノイドのβ一カロテン、ルテインを同時に分析することが可能である(図2、図3)

[成果の活用面・留意点]

1 野菜の内容成分を簡易に分析する際の資料とする。
2 葉ネギ、コマツナ、キャベツ等の葉茎菜類やトマト、キュウリ等の果菜類におけるこの方法を用いた分析値は既知の一般的データとほぼ一致するが、従来法との比較が必要である。
3 この方法では試料の精製過程を省略しているため、従来の方法よりカラムの劣化が速い可能性がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:野菜の品種及び栽培条件と機能性成分
予算区分:県特
研究期間:平成9年度(平成9〜12年)
研究担当者:満田幸恵
発表論文等:平成9年度園芸研究所野菜花き部野菜試験成績書