促成トマトの高糖度生産のための隔離床栽培における自動かん水方法

[要約]高糖度の促成トマトの生産のためには、自動かん水システムを利用して生育中期の第3花房開花期からかん水制限を行うことにより、第2果房以降は果重が80g、糖度が7〜8%程度の果実を生産できる。また生育後期の第6花房開花期からかん水制限を行うことにより、第2果房以降に果重が120、糖度が6%程度の果実を生産できる。


園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室 [連絡先]092−922−4111
[部会名]園芸 [専門]栽培 [対象]果菜類 [分類]普及


[背景・ねらい]

促成トマトでは、収量の低下を抑えた高糖度化技術が求められており、これまでに、土壌水分の調節が容易な隔離床栽培槽を利用した栽培法を開発した(平成3年度、農業関係試験研究の成果)。一方、水分センサーと電磁弁およびタイマーを組み合わせることにより、土壌水分を精度高く制御できる自動かん水システムがイチゴの土耕栽培で明らかになった(平成7年度、農業関係試験研究の成果)。そこで、これらの技術を組み合わせて、トマトの隔離床栽培における生育時期別のかん水管理の目安を明らかにし、高糖度トマトを安定生産できる自動かん水技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

1 促成トマトを隔離床で栽培する場合、自動かん水システムを利用して定植から第3花房開花期までの生育初期はpF1.8〜1.6、第3花房開花期から収穫終了まではpF2.8〜2.6を目標として水分管理することにより、第2果房以降に果重80gで糖度(Brix)7〜8%程度の果実を生産できる(表1、表2、表3)。
2 生育初期・中期はpFl.8〜1.6、生育後期の第6花房開花期から収穫終了までの期間はpF2.8〜2.6で土壌水分を管理することにより、第2果房以降果重1209で糖度6%程度の果実を生産できる(表1、表2、表3)。
3 かん水量が多く生育が旺盛過ぎる場合に発生し易い空洞果は、生育中期・後期にpFを2.8〜2.6で管理すると発生が少ない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1 主要野菜の栽培技術指針に登載し活用する。
2 隔離床には「赤玉粒状培土」を用いる。この栽培では通常の土耕栽培に比べて肥料切れが早いので追肥を早めに行う。
3 土壌水分センサーを利用するため、かん水むらのないチューブを利用する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:高品質トマトの省力的生産技術の確立
予算区分.経常
研究期間。平成9年度(平成5〜8年)
研究担当者:月時和隆、山本幸彦、満田幸恵
発表論文等:平成5〜8年度園芸研究所野菜花き部野菜試験成績書、「トマトの隔離床栽培における生育期別少かん水処理が収量、品質に及ぼす影響」、園芸学会九州支部研究集録、第5号、1997