イチゴおよびトマト栽培における灌水方法別の畝内土壌水分の動態

[要約]イチゴの土耕栽培で1日に5回、pF値によって少量灌水を行う制御方式は、畝内の土壌水分の変動幅が小さい。トマトの隔離床栽培での地中多孔質ゴムホ-ス利用は、隔離床の端の部分への水の浸透性が優れる。

園芸研究所・野菜花き部・施設機械研究室 [連絡先]092-922-4111

[部会名]園 芸 [専門]機 械 [対象]果菜類 [分類]指 導

[背景・ねらい]

施設園芸における灌水作業は、栽培者の長年の経験や勘に基づいて行われており、効率的な灌水作業の省力化を目的とした土壌水分の自動制御技術の確立が望まれている。土壌水分センサ−を用いた灌水システムは開発・市販されているが、灌水方式別の畝内における土壌水分の動態等の把握が不十分である。 そこで、灌水の自動化技術開発のための基礎情報を得ることを目的として、イチゴとトマト栽培畝を対象に、センサ−利用における水分測定位置、灌水方式が異なる場合の畝内土壌水分の動態を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@畝内の位置別pF値は、灌水直後から2日間の推移を見るとイチゴの土耕栽培の場合、地下5cmでは2.3〜1.7と極端に変化し、逆に、地下25cmでは1.7〜1.5で変化の幅が小さい。地下15cmでは2.0→1.6(灌水直後)→1.9の範囲で変化した(図1)。
A灌水方式別の畝内の土壌水分(灌水1、24、48時間後)は、イチゴの土耕栽培の場合、1日5回、pF値によってイチゴ用灌水チュ-ブで少量灌水を行う方式では、地下15cmのpFが1.7→1.8→1.9、地下25cmが1.5→1.6→1.7という変化を示し土壌水分の変化幅が小さい。一方、1日1回、pF値によって多量灌水を行う方式では、地下15cmが48時間後も1.5の値を示した(図2)。
B灌水資材別の畝内の土壌水分は、トマトの隔離床栽培の場合、地中多孔質ゴムホ-ス利用では地表散水チュ-ブに比べて灌水をゆっくり行うため、隔離床の端の部分まで水が浸透する(図3)。一方、イチゴの土耕栽培の場合の地中多孔質ゴムホ-ス利用では、畝端への水の浸透性は優れるが、地下5cm地点への水の浸透が不十分である。また、地中点滴ホ-ス利用では、点滴方式のため、場所により水分の乾湿ムラが生じ易い(デ−タ略)。

[成果の活用面・留意点]
@施設園芸作物の栽培における灌水の自動化技術を確立するための基礎資料として活用する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:土壌養水分の自動制御技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成5〜8年)
研究担当者:森山友幸、真鍋尚義、金丸 隆、姫野修一
発表論文等:平成8年度園芸研究所野菜花き部施設機械研究室成績概要