簡易高所作業車導入によるトマト主枝吊り降ろし作業の労働負担軽減効果

[要約]トマトの主枝吊り降ろし作業においては、簡易高所作業車を利用することにより作業時間が慣行に比べ32%短縮でき、筋電位から見た肩への筋負担は左右ともに57%程度軽減できた。作業車の操作は簡単で走行性も安定しており、トマト、キュウリ等施設果菜類のハイワイヤー栽培に利用できる。

園芸研究所・野菜花き部・施設機械研究室 連絡先 092-922-4111
[部会名] 園 芸 [専門]機械 [対象]果菜類 [分類]普及

[背景・ねらい]

施設園芸における新しい栽培技術として、作物の生産能力を最大限に活用するハイワイヤー栽培が今後普及することが見込まれている。この栽培法では、作物の主枝吊り降ろし作業や摘心、腋芽摘み等の作業を慣行栽培の場合に比べてかなり高い位置で行うことが必要であるため、これまでに栽培管理の省力・軽作業化を低コストで実現可能な簡易な高所作業車を開発した(平成7年度農業関係試験研究の成果)。
そこで、開発した簡易高所作業車の普及を図ることを目的に、作業能率および労働負担軽減効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@トマトの主枝吊り降ろし作業においては、簡易高所作業車を利用することにより作業時間が慣行の高下駄履き作業に比べ32%短縮できた(写真1、写真2、表1)。
A慣行の高下駄履き作業は、腕が肩より上になる姿勢の出現割合が61%に達し、主枝を抱える時の肩への筋負担が大きく、作業後に首、肩の筋疲労が生じる。しかし、高所作業車を利用すると、腕が肩より上になる姿勢はなくなり、作業後の筋疲労自覚症状もなくなる。また、筋電位から見た肩への筋負担は左右ともに57%程度軽減できた(表1)。
Bトマトの主枝吊り降ろし作業における簡易高所作業車の利用では、高所の作業でも操作は簡単で走行性も非常に安定しており、安心して作業を行うことができる。
[成果の活用面・留意点]
@福岡県野菜生産省力化の手引きに登載し、ハイワイヤー栽培における省力・軽作業化のための資料として活用する。
A開発した簡易高所作業車は、トマトの他にキュウリのハイワイヤー栽培にも利用できる。
B主枝の吊り降ろし作業の他に、摘芽、ホルモン処理、誘引紐取り付け等の作業にも利用できるため、管理作業全体の省力、軽作業化が期待できる。
[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イチゴ多目的作業車の利用技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(8〜9年)
研究担当者:姫野修一、真鍋尚義、森山友幸
発表論文等:平成8年度園芸研究所野菜花き部施設機械研究室成績概要書