イチゴ「とよのか」の高設採苗における活着促進のための吸水性不織布の利用技術

[要約] イチゴ「とよのか」の高設採苗法において、子苗の発根基部に不織布を付着させ、その内部を散水や寒冷紗被覆により湿った状態を保つことにより発根が促進され、切り離し後の活着率も高い。また、不織布が付着した状態で子苗を植え付けるため、固定するために必要な針金等の資材が不要となる。

園芸研究所・野菜花き部・野菜品種研究室 [連絡先]092-922-4111
[部会名]園 芸 [専門]育 苗 [対象]果菜類 [分類]普及

[背景・ねらい]

イチゴ「とよのか」の高設採苗法(平成7年度農業関係試験研究の成果に登載)は、管理作業の省力・軽作業化やたんそ病の発生防止技術として高い効果があるが、子苗の発根が抑制されることから、採苗は手間を要する「鉢受け法」で行われている。子苗の植え付けなどの作業が短時間でできる「鉢上げ法」による採苗作業の省力化を図るために、子苗の発根促進技術の開発が強く望まれている。
そこで、高設採苗法において、ランナーで繋がっている状態の子苗の発根基部に、高い保水機能を有する不職布(長さ8cm、幅2cm、厚さ1cm、中央部の横方向に1cmのスリット)を付着させ、水分を持続的に保持することによる発根や活着促進効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@吸水性不織布を子苗の発根基部にステープルで付着し、散水や寒冷紗被覆下での散水により不織布内の水分を保つと発根が促進される(写真1、写真2、図1、図2)。
A切り離した後の活着も良好で、‘とよのか’においてその効果が高い(図3)。
B重量あたりの不織布の保水倍率は19倍程度と極めて高く、子苗の発根基部が常に湿った状態を長い時間維持できる(データ省略)。
C不織布を付けたまま子苗を植え付けるので、ポットの培土へ子苗を固定するための資材が不要となる。
D不織布の素材はレーヨンで、土中で短期間に分解し、イチゴの生育に悪影響は及ぼさない。

[成果の活用面・留意点]
@野菜生産省力化の手引きや野菜の栽培指導指針に登載し、高設採苗法における省力的な鉢受け法として活用を図る。
A不織布の付着は随時行うが、不織布への散水は採苗予定日の10〜14日前から開始する。
B植え付け後、活着までの2,3日間は葉の表面が乾かないように頻繁に散水する。
[具体的データ]


[その他]

研究課題名:イチゴの省力軽作業化生産技術の開発
予算区分:県特
研究期間:平成9年度(平成8〜12年)
研究担当者:伏原 肇、三井寿一
発表論文等:園芸学会雑誌66巻 別冊2(1997)