イチゴ「さちのか」の促成栽培における特性


[要約] 農林水産省育成イチゴ「さちのか」は、草姿が立性で草勢の維持が容易であり、収量が安定して多い。果実の着色は良好で厳寒期でも着色不良果が発生しないため、葉除け作業が不要で省力的栽培に適する。果実は「とよのか」より硬く、糖度、糖酸比も「とよのか」と同程度で品質が優れる。


園芸研究所・野菜花き部・野菜品種研究室 連絡先 092-922-4111
[部会名]園 芸 [専門]育 苗 [対象]果菜類 [分類]普及

[背景・ねらい]

イチゴ「とよのか」は、果実品質が優れることから市場性が高く、イチゴ生産者の所得向上に貢献している。しかしながら、厳寒期の着色不良果が発生しやすいため葉除け作業などに多くの管理労力が必要である。また、産地では生産者の高齢化が進み、生産者数も減少していることから、省力栽培に適する品種が望まれている。
そこで、厳寒期でも着色が良好な農水省野菜茶試育成の新品種「さちのか」(「とよのか」×「アイベリー」)について、本県での促成栽培適応性を検討する。

[成果の内容・特徴]
@草姿はやや立性で草勢は強く、冬期でも草勢の維持が容易である。
A収量は「とよのか」に比べて年次間変動も小さく安定して多い(第1図)。
B「とよのか」に比べて花芽分化時期、開花時期がやや遅い(第1表)。
C果実の大きさは「とよのか」とほぼ同等であるが、肉質が緻密で重量感があるため外観はやや小さ目である。果形は長円錐形で光沢がある(第2表)。
D果皮色は「とよのか」に比べて濃い赤色(第2表)で、厳寒期でも着色不良果は発生しないので、葉除けなどの着色不良果発生防止のための作業が不要となる。
E果実はBrix(糖度)および糖酸比は安定して高く、時期的な変動が少ない。果実は「とよのか」より硬く(第2表)、収穫や調整時における果実の傷みが少ない。
F「とよのか」に比べて果実の香りは少ない(第2表)。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県野菜推奨品種一覧に登載し、省力栽培に適する品種として普及を図る。
Aマルチフィルム上で果実が水浸すると「とよのか」より果皮が傷み易いので、果実の下には果実マットを敷く。
B特定の病害虫に対する抵抗性はなく、炭そ病には「とよのか」と同程度〜やや弱い(育成地における特性検定試験取り纏め資料)。
[具体的データ]


[その他]

研究課題名:イチゴの新品種適応性
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:伏原 肇、三井寿一
発表論文等:平成6年、7年、8年度 園芸研究所 野菜試験研究成績概要書