生育初期の地温がイチゴの生育と養分吸収に及ぼす影響

[要約] イチゴの夏期低温処理苗を9月上旬から10月上旬まで日平均気温約20℃で栽培した場合、日平均地温が31℃〜21℃の範囲では、地温が低いほど乾物生産量及び養分吸収量が多い。また、日平均地温が31℃では、頂果房及び液果房の出蕾が遅くなる。


生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室[連絡先]092−924−2939

[部会名]園 芸 [専門]生理 [対象]果菜類 [分類]研究

〔背景・ねらい]
イチゴの夏期低温処理による促成栽培では、定植前マルチングは省力化とともに、肥料成分の流亡を抑制し、減肥できることが期待される。しかし、定植前マルチングは慣行マルチングより地温が上昇し、生育に対する悪影響も懸念きれる。そこで、定植後1ヶ月間の地温とイチゴの初期生育及び養分吸収の関係についてファイトトロンで検討し、基礎的知見を得る。

[成果の内容・特徴]
@夏期低温処理した苗を9月上旬に定植し、日平均気温約20℃で栽培した場合、葉柄及び葉身の乾物生産量は日平均地温が31〜21℃の範囲では、地温が低いほど増加するが、日平均地温18℃以下ではやや減少する。クラウン、根の乾物生産量は、日平均地温が31〜18℃の範囲では、地温が低いほど増加する(表1)。
A9月上旬〜10月上旬に日平均気温21.4℃で栽培した場合、日平均地温が31℃になると頂果房及び液果房の出蕾が遅くなる(表2)。
B各器官の窒素、リン酸、加里、カルシウム、マグネシウム濃度は、地温によって顕著な差はみられず(データ略)、各成分の吸収量は乾物重の大きい地温21.1℃で最も多くなる(表3)。
〔成果の活用面・留意点]
@イチゴの定植前マルチングと土壌水分管理による、省力的で環境保全型の栽培管理技術を確立するための基礎資料にする。

[具体的データ]

[その他」
研究課題名:マルチ栽培におけるイチゴの養分吸収特性と土壌中における養分の動態予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年度)
研究担当者:井上恵子、兼子 明、末信真二、荒木雅登
発表論文等:平成6〜8年度化学部春夏作試験成績書