イチゴのクラウンを利用した2芽苗育苗のためのクラウン調製法


[要約]
 イチゴのクラウンを利用して2芽の苗を養成するには、育苗ポットへ の鉢上げ時に、根を2〜5cm、新葉を1芽当り1〜2枚残した状態に調製して移植することによって、鉢上げ後の生存率が高くなり、2芽苗が効率的に養成できる。

園芸研究所・野菜花き部・野菜品種研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園  芸  
[専門] 栽 培
[対象] 果菜類
[分類] 研究


[背景・ねらい]
 現在、慣行で行われているランナー繁殖による育苗では、苗を生産する親株の管理は採苗前年の11月から翌年6月までの長期間に及んでおり、本圃の収穫作業や管理作業と重なっているため、親株の栽培期間の短縮や管理労力の軽減が望まれている。また、農家経営の安定化を図るためには、販売価格の高い年内収量を増加させることも必要である。
 イチゴの採苗において、本圃での収穫が終了した株のクラウンを再び生産苗として利用すれば、親株管理は不要となる。また、2〜3個に増えた腋芽を活用して、1株に2個の頂果房をつける2芽苗を養成でき、年内収量の増加も期待できる。そこで、収穫株のクラウンの芽を2芽に揃え、苗として育苗用ポットに鉢上げする場合のクラウンの根部及び茎葉の調製法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
 イチゴのクラウンを利用して2芽の苗を養成する場合、根を2〜5cm、新葉を1芽当り1〜2枚残して株を調製する(図省略)。
@根及び葉を全て除去すると鉢上げ後の生存率は著しく低くなり、葉除去の影響は特に大きい(表1)。

A収穫が終わった株を5月下旬〜6月中旬に掘り上げポリポットで育苗すると、9月上旬には、ランナーから養成した慣行の苗と同程度の大きさの苗を養成できる(表1)。

Bインドール酪酸、アルファーナフチルアセトアミドの発根促進効果は無かった(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
@収穫株のクラウンから2芽苗を養成する場合の基礎資料とする。

A調製時の葉の除去は葉柄基部から行い、移植は発根を促進させるためにクラウンの基部まで培土に埋め込む(図1)。

B育苗中の温度上昇による活着への悪影響を防止するため、活着するまでは、寒冷紗被覆やミスト噴霧等で管理を行うことが望ましい。

C育苗培土は、かん水にミスト噴霧を用いる場合には、慣行培土(容量比;粒状培土6:真砂土3:もみがらくん炭2)、園芸培土が適している。

D収穫株の利用であるため、炭そ病などの病害防除を徹底する。


[具体的データ]





[その他] 
研究課題名:イチゴの育苗労力軽減と早期多収生産のための利用育苗技術の開発
予算区分:国庫(地域重要) 
研究期間:平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者:三井寿一、伏原 肇 
発表論文等:平成6〜7年度園芸研究所野菜花き部野菜試験研究成績概要集