葉ワサビ酒粕漬け加工における最適ブランチング条件と貯蔵法


[要約] 
 間地の特産物である葉ワサビの酒粕漬け製造において、緑色及び辛味を保持するための最適ブランチング温度は60℃、ブランチング時間は2〜4分である。 また、冷凍保存することによって辛味及び緑色が長期間保持できる。

八女分場・中山間地作物研究室
[連絡先] 0943-42-0292
[部会名]  園芸
[専門]   加工利用
[対象]   工芸作物類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  山間地で栽培される葉ワサビは、主として酒粕漬けに加工され地域の特産物として重要である。しかし、葉ワサビの収穫適期幅が狭く、加工が一時期に集中すること、及び加工後の変色による商品性の低下が問題となっている。 そのため、加工後の変色を防止できるブランチング条件及び加工製品の保存方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@葉ワサビ酒粕漬けの加工において、変色を防止しワサビの風味を保持する最適ブランチング条件は、60℃、2〜4分であり、これを4℃で冷蔵すると3週間は品質が低下しない。なお、60℃でブランチング時間が短くなると辛味の発現が少なく、70℃以上ではブランチング時間の長短に関係なく、褐変しやすく、辛味も低下する(表1)。

A密封包装の形態にかかわらず、冷凍貯蔵によって品質の保持が可能である(表2)。しかも、冷凍後1年を経過しても品質の低下は認められない。

B緑色を保持するための重曹等の添加や辛味付けのためのワサビ辛味抽出物の添加は食味及び品質の低下をまねく(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
@山間地の葉ワサビ酒粕漬け加工及び製品の貯蔵法として利用できる。

A葉ワサビの茎基部の硬化した部分は、上記のブランチング条件でも褐変するので、加工前に取り除く必要がある。

B供試した葉ワサビ酒粕漬けの材料は葉ワサビ、酒粕、酒、砂糖で、重量比は10:5:2:1である。


[具体的データ]    

  表1 葉ワサビのブランチング条件と各種品質の経時的変化(平成5年)


注)@貯蔵は4℃の冷蔵とし、品質は官能調査によった。褐変及び腐敗は1:無、
   2:少、3:中、4:多、辛味は1:極辛い、2:辛い、3:僅かに辛い、
   4:辛味無とした。
  A表中のIは処理後1日、Uは1週間目、Vは2週間、Wは3週間を示す。


  表2 葉ワサビ酒柏漬けの貯蔵方法と品質の経時変化(平成5年)

注)@ブランチング条件は70℃、、7秒。   
  A包装量は45gとし、貯蔵温度は、室温:15℃、冷蔵:4℃、
   冷凍:−30℃とした。
  BI、U、V、Wは表1と同様。
  C冷凍貯蔵では、1年を経過しても渇変、辛味、腐敗程度は1であった。


[その他]
研究課題名:葉ワサビ貯蔵技術の開発
予算 区分:経 常
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:大賀康之、執行明久、大森 宏
発表論文等:平成4〜6年度 福岡県農業総合試験場八女分場 試験成績書