ダイコン収穫作業における搬出積込作業の労働負担


[要約]
 農家が ダイコンを3人1組で1日に1,000本程度収穫する作業体系では、搬出積み込み作業に一輪車又は動力運搬車のいずれを利用しても、作業能率と労働負担には差がみられない。しかし、搬出積み込み作業を主に行う作業者は作業中の心拍数が安静時の2倍程度にまで増加するので、労働負担が大きい。

園芸研究所・野菜花き部・施設機械研究室
[連絡先]   092-922-4111
[部会名]  園芸
[専門]    作業
[対象]   根菜類
[分類]    指導


[背景・ねらい]
 福岡県内のダイコン収穫作業においては、圃場での収穫物の搬出・運搬に一輪車や動力運搬車、専用台車、トラック等が利用されているが、搬出積み込み作業者の労働負担の大きいことが問題となっている。一方、労働負担の問題を具体的に評価して労働改善を図るためには、労働負担の計測事例を集積し、評価手法を確立する必要がある。 
 そこで、添田町の金の原台地ダイコン生産農家を対象に、収穫作業における作業条件、作業能率及び労働負担の程度を調査した。

[成果の内容・特徴]
@ダイコンの引き抜き力は「あきしの」では7kgf程度で、結束後に抱える1束の重量は14s程度である(表1)。

A圃場からトラックまでの距離が25m以内で、1日の収穫本数が1,000 本程度の場合、一輪車使用と動力運搬車使用の比較では、作業総距離と搬出作業速度は異なるものの総作業時間はいずれも約60分で、搬出積み込みの作業能率には差がみられない(表2)。

B労働負担の程度を示す作業前後の腰椎可動角度の差及び作業時の心拍数増加の程度は、一輪車使用と動力運搬車使用の比較では差がない(表3、4)。

Cしかし、労働負担を作業別にみると、搬出積み込み作業を主として行う者は、本作業時の心拍数が安静時の2倍程度に増加しており、労働負担が大きい(表4)。

D添田町のダイコン生産農家の作業別心拍数計測事例から、重量野菜の収穫作業が1時間程度の場合においても、労働負担を評価する方法として心拍数を測定することは有効といえる(表4)。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県野菜生産省力化の手引きに登載する。

A野菜生産における労働負担の評価手法や評価基準を作成するために有効な情報として利用できる。

B労働負担の程度を計測値から評価するに当たっては、対象とする作業の作業環境や具体的な作業内容別作業時間、作業量の他に、個人差についても検討する必要がある。

C搬出積み込み作業の機械化により、重量野菜を抱える回数を減らすことが重要である。


[具体的データ]

 表1 ダイコンの引き抜き力、1束重量等(平成6年)

  注)引き抜き力、作物+土重量は10本×2カ所、
    1束(9本)重量は10束測定の平均値。




            表2 作業能率(平成6年)

  注)@3人での引き抜き、搬出、トラックヘの積み込みまでの総作業時間は、一輪車使用で
    57分、運搬車使用では63分(中断時間2分を含む)で差はなかった。搬出積み込み
    時間は約50分。
    A一輪車を使用した場合は、・搬出作業の後半には前半に比ぺて運搬時の作業速度がや
    や低下する傾向を示した。


   表3 作業者の作業前後における腰椎可動角度(平成6年)

  注)@キホメーターを用いて測定。
    A作業前後における腰椎可動角度の差が大きい方が作業の労働負担が大きかったと推察できる。


   表4 作業者の心拍数の経時変化の特徴(平成6年12月)

   注)心拍測定装置(T.K.K1850a)を用いて、収穫作業開始前の約30分前から作業終了後約
     10分後までの約100分間、1分毎に測定記録。


[その他] 
研究課題名:新型農業機械の性能試験    
予算 区分:経常      
研究 期間:平成6年度(平成6年)
研究担当者:真鍋尚義、森山友幸、金丸 隆
発表論文等:平成7年3月福岡県農政部中山間地域農業機械整備促進事業報告書