イチゴ棚式育苗利用によるサラダナの水耕栽培法


[要約]
 イチゴ棚式育苗システムを利用してサラダナを1年間に9回作付けできる簡易水耕栽培法を確立した。本栽培法は高価な施設を必要としない湛液水耕栽培であり快適な作業環境で省力・低コストの高度作付生産が可能である。

福岡県農業総合試験場・園芸研究所・施設機械研究室
[連絡先]   092-922-4111
[部会名]  園芸
[専門]   農業施設
[対象]   葉菜類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  養液栽培は、土耕栽培に比べて管理・収穫作業の省力化・軽作業化と連作障害の回避及び安定的な計画生産等の利点があり需要が増大している。また、イチゴ農家ではイチゴの育苗に棚式育苗システムの利用が進んでいるが、この育苗システムを他品目の生産に活用することが資材節約の面から期待されている。そこで、本システム利用によるサラダナの周年簡易水耕栽培法を確立する。

[成果の内容・特徴]
@簡易水槽の上にイチゴ棚式育苗用のパネルと小型ポットを装着し、ポットの先端を2p程度培養液に浸たしてサラダナを生産する簡易水耕栽培法を開発した(図1)。

A簡易水槽は、板及びビニル製の水槽(幅120p、高さ20p)で、これにイチゴ棚式育苗用パネルと育苗小型ポットを組み合せることで、15p間隔にサラダナを栽培できる(図1)。

B栽培期間は季節により異なり、春夏季では育苗が約2 日間で水耕栽培が約30日間の計約50日間、秋冬季では育苗が約30日間で水耕栽培が約55日間の計約85日間であり1年間に9回作付けすることできる(図2)。   

C本栽培法は湛液水耕栽培であるため耕起・マルチ等の圃場作業がなく、1作当たりの労働時間は164hr/10aと極めて少ない。また、種苗費や肥料費、諸材料費、 施設費は慣行栽培より多いものの、労働費が少ないために生産費は少なくてすむ (表1)。

D作業環境は、水耕栽培であるために慣行栽培より快適である。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県野菜生産省力化の手引きに登載する。

Aイチゴ農家ではイチゴ棚式育苗システムの汎用利用が可能となる。


[具体的データ] 


       図1 棚式育苗システムを使ったサラダナの簡易水耕栽培



       図2  サラダナの簡易水耕栽培における作付体系
         注)○:播種、×:定植、□:収穫。


    表1 10a,1作当たりの収穫までの労働時間及び主な生産費

  注)@作型は、ビニルハウスでの年9回作付けの周年栽培、慣行はビニルハウスでの
     年5回作付け。
    A諸材料には育苗トレイ、ハウスビニル、バンド、ビニル(慣行はマルチ)及び
     育苗培土が含まれる。
    B培土費用は、水耕栽培では3作利用を前提に算出して44,293円であり、
     慣行栽培(通常の1作利用)の4,280円に比ぺてかなり経費が高い。


[その他] 
研究課題名:棚式育苗システムの利用技術
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成5〜6年)
研究担当者:森山友幸、真鍋尚義、金丸 隆
発表論文等:平成6年度園芸研究所野菜花き部施設機械研究室の成績概要