イチゴ棚式育苗システムにおける置肥の利用法


[要約]
 イチゴを棚式育苗システムを用いて育苗する場合、置肥を施用すると液肥の施用回数を半減できる。6月上旬採苗の普通促成栽培では、置肥施用と1週間に1回の液肥施用の組み合わせによってクラウン径10mm程度の良質な苗が養成できる。

園芸研究所・野菜花き部・野菜品種研究室
[連絡先]   092−922−4111
[部会名]   園芸 
[専門]     肥料
[対象]    果菜類
[分類]     普及


[背景・ねらい]
 イチゴ棚式育苗システムを用いてイチゴを育苗する場合の施肥は、液肥中心に行われてきた。しかし、従来のポット育苗に比べて培土量が少ないために1日当りのかん水回数が多く、施用した養分の流亡も多くなり、クラウン径10mm程度の苗を養成するためには、液肥を1週間に2回施用する必要がある。そこで、置肥を利用して、液肥施用回数の低減を図る。

[成果の内容・特徴]
@1週間に1回の液肥施用と置肥施用を組み合わせると、液肥のみを1週間に2回施用する場合に比べて、クラウン径が同程度で、葉色の濃い、良質なイチゴ苗が省力的に養成できる(図1,2)。

A置肥として袋入り緩効性肥料を用いる場合、1株に1袋(2g)の施用でクラウン径10mm程度の苗が安定して養成できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
@イチゴ棚式育苗システムの栽培基準作成の資料として活用する。

A鉢受け方式による採苗の場合には、置肥はランナーを切り離して1週間程度経過してから施用する。

B袋入り緩効性肥料は飛散しやすいので、爪楊枝等を用いて培土に固定する。


[具体的データ]



 図1 置肥施用及び液肥施用回数とクラウン径(平成5年)

 注)@a,b,cの符号は異符号間で5%の
   有意水準で有意
   A置肥:袋入り緩効性肥料40日タイプ
   を1袋(2g)施用
   B液肥:0KF1・1000倍液のかん注
   C採苗:6月12日、調査:8月18日




 図2 置肥施用及び液肥施用回数と葉色(平成5年)

  注)@葉色はSPAD501による測定値
    Aその他は図1に同じ




   図3 置肥の施用とクラウン径

    注)@液肥:OKF1・1000倍液を週1回かん注
      A採苗時期:6月上旬
      B調査時期:平成4年:9月28日、平成5年:8月18日平成6年:9月26日


参 考
袋入り緩効性肥料:オクダーケ(1袋2g入り)
 成分 N   :13.0%
    P205:11.0%
    K2O :13.0%
   タイプの違いは25℃条件での含有窒素の80%溶出日数


[その他] 
研究課題名:イチゴ超省力生産システムの開発
予算区分:県特 
研究期間:平成6年度(平成4〜7年)
研究担当者:三井寿一、伏原 肇、林 三徳 
発表論文等:平成4〜6年度園芸研究所野菜花き部野菜品種研究室試験成績書