中山間地における夏秋季採りイチゴ栽培の安定化方策

[要約]夏秋季採りイチゴ栽培を行う場合、換気性に優れた施設を用い、日中は遮光を行い、高設栽培で果実を空中に浮かせ、渓流水などで地下部を冷却することにより、地温や果実温度の上昇を5〜7℃程度抑えることができ、イチゴの生育・収量は向上する。

 八女分場・中山間地作物研究室  [連絡先]0943-42-0292
 [部会名]園 芸  [専門]栽 培  [対象]果菜類 [分 類]研 究
 
[背景・ねらい]
 夏秋季のイチゴ栽培は高温により生育・収量が不安定なため、平坦地での取り組みは困難である。そこで、中山間地域における冷涼な気象条件を活かした夏秋季採りイチゴ安定栽培法を確立する。ここでは、高設栽培や渓流水の利用などにより、地温や果実温度の上昇を抑える方策等を検討する。
 
[成果の内容・特徴]
 
 1 換気性の良い屋根開放型ハウスで高設栽培し、果実を空中に浮かせると、ビニルハウス内の平畝マルチ上に接した果実に比べ、果実の温度上昇を最大7℃程度抑えることができ  る(図1)。
 
 2 換気性の良い屋根開放型ハウスで日中遮光して栽培することにより、通常のビニルハウスに比べ、晴天日の気温上昇を最大で6℃程度抑えることができる。また地温の上昇も7℃程度抑えることができる(図2)。
 
 3 渓流水などの通水による地下部冷却により、地温の上昇を昼夜ともに 2.5℃程度抑えることができる(図3)。高設栽培した場合の地温は、平畝栽培に比べ気温の影響を受けやすく、変動幅も大きいので、ハウス内の気温管理が重要となる(データ略)。
 
 4 イチゴの地下部を冷却することにより、夏採りイチゴの生育や収量は向上する(図4)。
 
[成果の活用面・留意点]
 
 1 平成11〜14年度に実施予定の「中山間地域における高収益野菜・花き生産技術の確立」において、本成果で得られた温度上昇抑制方策を活用し、夏秋季採りイチゴ品種を含めた、実用性の高い新作型の開発を行う。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:中山間地域活性化農業生産技術の確立
予算区分:県特
研究期間:平成10年度(平成7年〜10年)
研究担当者:月時和隆・執行明久・成清 潔・大賀康之
発表論文等:平成7〜10年度 八女分場中山間地作物研究室成績概要書
      中山間地域農業活性化技術開発事業報告書(平成11年7月)