いぐさ連作田におけるスダックスのすき込みによるいぐさの収量及び品質向上

[要約]いぐさ−休閑体系の連作田において、いくさの後にスダックスを無肥料で栽培し出穂前にすき込むと、スダックスの吸収した残留窒素成分が後作いくさに吸収され、さらに、土壌理化学性の改善により、後作のいぐさの収量及び品質が向上する。


筑後分場・い草研究室 [連絡先]0944−32−1029
[部会名]農産 [専門]栽培 [対象]工芸作物類 [分類]普及


[背景・ねらい]

近年、いぐさ作は、収量低下及び老熟に伴う部分変色茎の増加が問題となっている。その原因は長年の連作に伴う化学肥料の多量施用や有機物不足による地力低下、土壌理化学性の悪化が考えられる。そこで、いぐさ−休閑体系のいぐさ連作田において、いぐさ作後に緑肥作物(スダックス緑肥用:スーダン型ソルゴー)を栽培してすき込むことで、有機物の補給及び緑肥作物の吸収したいぐさ後地の残留肥料成分の利用を図り、さらに土壌理化学性の改善により収量及び品質が向上する技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

1 いぐさ刈取り後の7月下旬にスダックスを4s/10a播種し、無肥料で栽培して出穂前にすき込むと有機物の補給や肥料的効果が期待できる(表1)。また、スダックスの根はすき床層よりも深く伸長するので長期的には土壌物理性の改善が期待できる(表1)。
2 スダックスの土壌中での分解は稲わらよりも速いため、いぐさはスダックスの放出した窒素成分等を吸収して生育が良好になる(図1、表2)。
3 いぐさ−スダックス体系は、いぐさ−休閑体系よりもいぐさの伸長及び収量性が優れ、部分変色茎が少なく、また、畳表の評価でも色調、腰の強さに優れる(表2)。
4 スダックスをすき込んだいぐさ作後は、休閑−いぐさ作後よりもいぐさ後地作土中の可給態窒素量及び腐植含量が増加する(表3)。

[成果の活用・留意点〕

1 いぐさ栽培指導資料として活用する。
2 いぐさ−休閑の連作の栽培体系で減収、先枯れ及び部分変色茎の増加がみられる圃場に適用する。
3 スダックスのすき込みは茎の柔軟な出穂前にロータリー耕で押し倒しながら行う。
4 スダックスの分解を促進させるために、すき込みから1〜2週間後に再度耕転し、すき込みからいぐさ植付まで60日程度の期間をおく。
5 スダックス作後のいぐさの基肥及び追肥は基準量を施用する。ただし、スダックスの茎葉生産量が過剰な場合、後作いぐさの基肥施用量を適宜減らす。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:連作障害の軽減技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:藤冨慎一、住吉強、内村要介
発表論文等:平成7〜8年度筑後分場いぐさ栽培・加工に関する試験成績書