早生、多収で麦芽品質の優れるビール大麦新品種候補「九州二条12号」

[要約]日本で初めて、半数体育種法により育成されたビール大麦の新品種侯補「九州二条12号」は、現在のビール大麦品種のなかで最も早生である。また、大麦縞萎縮病とうどんこ病に抵抗性を持ち、多収で麦芽品質は安定して優れる。


農産研究所・育種部・二条大麦育種研究室 [連絡先]092−924−2937
[部会名]農産 [専門]育種 [対象]麦類 [分類]普及


[背景・ねらい]

福岡県におけるビール大麦は、水稲との作期の競合が少ないため、土地利用型作物として重要な位置を占めている。しかし、基幹品種である「あまぎ二条」や「アサカゴールド」は、うどんこ病に弱く、凸腹粒等の被害粒の発生による外観品質の低下が大きい。実需者からは安定して上位等級が確保できる優れたビール大麦品種が望まれている。このため、大麦縞萎縮病とうどんこ病に抵抗性を有し醸造品質が極めて優れ、やや晩生のミハルゴールド」を育成している。
そこで、ビール大麦の作期の拡大と安定生産を図るため、「ミハルゴールド」との組合せが可能な早生で、大麦縞萎縮病とうどんこ病に抵抗性を持ち、被害粒の発生が少なく、麦芽品質の優れた多収品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

本品種候補は(吉系19/関東二条25号)F1にHorudeum bulosumを交配して作出した半数体から、その染色体を倍加した固定系統より育成された醸造用二条大麦である。

「あまぎ二条」と比較して次のような特徴をもつ。

1 出穂期、成熟期はそれぞれ3日、4日早い。
2 稈長と穂長はやや短く、穂数は多い。
3 耐倒伏性はやや強く、穂発芽性はやや難である。
4 大麦縞萎縮病とうどんこ病はともに強い。赤かび病は同程度である。
5 側面裂反粒は微程度発生するが、凸腹粒の発生は極微である。
6 千粒重が重く、整粒歩合が高い。
7 多収で、検査等級が優れる。
8 醸造用麦芽品質は麦芽エキス、コールバッハ数およびジアスターゼ力が特に優れ、総合評点が非常に高い。

[成果の活用面・留意点]

1 職務育成品種届け出後、農林登録と種苗登録申請予定。
2 早生のビール大麦品種として普及を図る。
3 早播きは側面裂反粒の発生を助長するので、適期播種に努める。
4 殻皮が薄いので、剥皮を生じないよう脱穀調製に十分注意する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:高醸造適性・多収・耐病性品種の育成
予算区分:国庫(指定試験)
研究期間:平成9年度(昭和61年度〜平成9年度)
研究担当者:古庄雅彦、馬場孝秀、山口修、吉田智彦、浜地勇次、吉川亮、水田一枝、吉野稔
発表論文等:bulbosum法により得られたビールオオムギの半数体倍加系統の農業形質と麦芽品質.(1992)育種学雑誌42:631−639