小麦品種「チクゴイズミ」の容積重、タンパク質含有率の変動要因と向上対策

[要約]
 小麦品種「チクゴイズミ」の容積重は、千粒重が重い年次に重く、播種量を減ずるか出穂期から穂揃期に追肥(穂揃期追肥)すると増加させることができる。タンパク質含有率地力の高い圃場や穂肥施用量が多い場合に増加し、穂揃期追肥により増加させることができる。

 農産研究所・栽培部・作物栽培研究室    [連絡先]092-924-2848
[部会名]農産    [専門]栽培  [対象]麦類  [分類]指導
 
[背景・ねらい]
  小麦の容積重やタンパク質含有率は、民間流通では品質評価の重要項目となっており、実需者のニ−ズに対応した品質の高い小麦の生産が求められている。福岡県産小麦のタンパク質含有率及び容積重は年次間差や地域間差が認められ、品質向上と安定化が求められている。そこで、「チクゴイズミ」の容積重やタンパク質含有率の変動要因や栽培法との関係を解明し、品質向上のための栽培法を確立する(要望機関名:農業振興課(H7))。
 
[成果の内容・特徴]
 1 小麦品種「チクゴイズミ」の容積重は、千粒重との関係が強く、千粒重の重い年は容積重も重い(図1)。タンパク質含有率は圃場条件の影響が大きく、地力の高い圃場では含有率が高い(図2)。
 
 2 播種量を減ずると容積重は増加するが、タンパク質含有率は低下する。容積重やタンパク質含有率に対する播種期の影響は大きいが、年により傾向が異なる。穂肥窒素施用量を増やすとタンパク質含有率は高くなるが、容積重には大きな差はない(表1)。
 
 3 出穂前2日から出穂後13日頃に追肥(穂揃期追肥)すると、タンパク質含有率と容積重を増加させることができる。追肥窒素量は穂肥2kg/10a+穂揃期追肥2kgが適当である(2)。穂揃期追肥による成熟期の遅れはない。尿素の葉面散布も同様の効果が得られる(データ省略)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 麦栽培技術指針に掲載し、「チクゴイズミ」の容積重の向上とタンパク質含有率の安定化のための資料として活用できる。
 2 タンパク含有率は原麦全粒の含有率を水分13.5%に換算した値である。
 1 平成9年度は長雨に遭遇したため、播種期の効果は他年度と異なる傾向を示した。
 
[具体的データ]
 
[その他]
 研究課題名:低アミロース小麦品種の製めん、外観品質向上対策
 予算区分:経常
 研究期間:平成10年度(平成7〜10年)
 研究担当者:田中浩平、福島裕助、陣内暢明、大賀康之
 発表論文等:平成10年度 福岡県農業総合試験場作物部会 秋冬作試験成績概要書