水稲の湛水直播栽培におけるスクミリンゴカイ被害軽減のための初期潤土管理

[要約]水稲の湛水直播栽培において、出芽直前に落水し、水稲3葉期程度まで溝切りにより潤土状態にすると、スクミリンゴカイによる被害を軽減することができる。


筑後分場・普通作物研究室 [連絡先]0944−32−1029
[部会名]農産 [専門]栽培 [対象]稲類 [分類]研究


[背景・ねらい]スクミリンゴカイは出芽直後から水稲を食害するため、湛水直播栽培では被害が大きくなりやすい。現在、本県におけるスクミリンゴカイの発生面積(19,000ha)は全水田面積の約40%に及び、年々増え続けている。このことから、湛水直播栽培の普及にあたってはスクミリンゴカイの被害回避技術の確立が急務となっている。そこで、水稲の湛水直播栽培において、スクミリンゴカイによる被害を軽減するための初期水管理技術を明らかにする。


[成果の内容・特徴]

1 水稲の出芽直前から一定の期間、落水して潤土状態(田面にひびが入らない程度の湿潤状態)にすることにより、スクミリンゴカイの活動は抑御され、被害が軽減される。潤土状態の期間が長いほど被害軽減効果は高い(図1)。
2 雑草量の多い条件で、除草剤処理を播種直後の1回とした場合、水稲5葉期の入水では雑草量により水稲の分げつ抑制がみられる。したがって、雑草害を考慮して、潤土状態の期間は水稲3葉期程度までが適当である(表1)。
3 田面の高低差が5p程度の10a規模圃場で、5mおきに深さ10pの溝切りを行い、出芽直前から潤土状態とし、水稲3葉期以降に湛水した場合、田面が低い部分の被害は大きいが、全体の被害面積は9.2%と少ない(図2)
4 降雨条件下では被害が大きくなるものの、溝切りを実施して表面水をできるだけ排除することで被害が軽減される(図3)

[成果の活用面・留意点]

1 多雨及び連続降雨条件下での溝切りによる排水方法については未検討である。
2 殺貝剤によるスクミリンゴカイの初期加害防止と潤土管理を組み合わせた体系的な加害防止対策を検討する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:スクミリンゴカイの被害軽減技術と雑草防除への利用
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成9年度(平成6〜9年)
研究担当者:福島格助、許斐健治、石丸知道
発表論文等:水稲湛水直播栽培における初期水管理がスクミリンゴカイの被害軽減に及ぼす影響、九農研、第60号