水稲良食味品種「ほほえみ」の食味および理化学的特性の県下における実態


[要約]「ほほえみ」の各地域における食味評価は「コシヒカリ」と同程度であるが、精米中のタンパク質含有率が高く、最高粘度が低く、ブレークダウンが小さい地域では食味評価が劣る傾向にある。


農産研究所・栽培部・作物品種研究室 [連絡先]092−924−2937
[部会名]農産 [専門]栽培 [対象]稲類 [分類]行政


[背景・ねらい]

米の市場において食味が重視されているなか、福岡県産米の市場評価の向上と消費拡大、、を図ることが緊急な課題となっている。これに対応するために、平成7年に早生の良食味品種として「ほほえみ」を準奨励品種に採用した。そこで良食味末生産の視点から「ほほえみ」の普及適地を検討するために、本品種の地域別の食味および理化学的特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 「ほほえみ」の県内39地域における食味の平均値は-0.08と「コシヒカリ」と同程度の食味を有し優れる。しかし、地域別にみると地域No1,6,8,11,18など食味評価が-0.31以下と劣る地域が認められる(表1)。また、標高と食味との関係は明らかでない。(図1)。

2 精米中のタンパク質含有率は5.98.2%の範囲で分布し、タンパク質含有率が著しく高い地域(No.6,18,19)が認められ、タンパク質含有率が高い地域ほど食味は劣る傾向を示す(表1、図2)。

3 アミロース含有率は14.617.3%の範囲で分布し、食味との間には一定の関係は認められなかったが(r=0.177)、標高が高い地域ほどアミロース含有率は高くなるという傾向(r=0.593***)が認められる(表1)。

4 アミログラム特性の最高粘度およびブレークダウンと食味との間には一定の関係が認められ、アミログラム特性値の低い地域ほど食味は劣る傾向が認められる(図3,4)。

[成果の活用面・留意点]

1 福岡県産米の消費拡大の一環として、「ほほえみ」の市場評価の向上のための流通・行政施策の資料として活用する。

2 水稲栽培技術指針に登載し、「ほほえみ」の良食味米安定生産のための対策技術の

資料として活用する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:作物の品種特性解析に関する試験
予算区分:経常
研究期間:平成9年度
研究担当者:松江勇次、尾形式文
発表論文等:平成9年度夏作試験成績概要書