水稲品種「つくし早生」の湛水直播栽培における被覆尿素による1回全量施肥法

[要約]水稲品種「つくし早生」の湛水直播栽培において、被覆尿素(シグモイド型100日、120日もしくはリニア型100日タイプ)を基肥として用いる1回全量施肥では、化成肥料を分施する場合に比べ、10%減肥しても分施並の収量が得られるとともに追肥作業が省略できる。


生産環覧研究所・化学部・作物栄養研究室 [連絡先]092−924−2939
[部会名]農産 [専門]肥料 [対象]稲類 [分類]普及


[背景・ねらい]

水稲の直播栽培は、従来の移植栽培に比べ、育苗作業が不要であることから省力化技術として注目されている。さらに作業時間の低減を図る目的で、本県育成の直播適用品種「つくし早生」を用いた湛水直播栽培において、窒素利用率が高いとされる被覆尿素を用い一回全量施肥した場合の収量性を化成肥料を分施する場合と比較し、施肥(追肥)作業の省力化の可能性や施肥技術を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 被覆肥料を施用した場合の「つくし早生」の精玄米収量は、窒素を10%減肥しても、化成肥料を分施した場合と同等である。緩効性肥料別では、L型100日タイプの緩効率80%が最も安定して多収である。また、S型の収量は100日と120日タイプでは顕著な差はないが、緩効率は70%の方が50%よりわずかに多い(表1)。
2 玄米窒素含有率については年次によって若干バラツキはあるが、ほとんど差はない。また、外観品質(検査等級)についても差がない(表2)。
3 肥料代は化成肥料を分施する場合と比べ、14〜35%(10a当たり500〜1,200円)割高となるが、追肥作業が省略できる利点がある(図1)。

[成果の活用面・留意点]

1 福岡県の水稲栽培技術指針、水稲施肥基準に登載する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:播種、施肥、雑草防除などの省力管理法
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:荒木雅登、兼子明、井上恵子、末信真二
発表論文等:なし