発酵鶏ふんと菜種油粕を利用した水稲の全量有機物施肥法

[要約]発酵鶏ふんを利用して水稲の施肥全量を有機物で施用するには、基肥に発酵鶏ふんを用い、地力の低い圃場では化学肥科に対する窒素肥効率を25%、地力が高い圃場では35%とする。穂肥には粒状菜種油粕を用い、化学肥料に対する窒素肥効率を100%とする。


生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室 [連絡先]092,924−2939
[部会名]農産 [専門]肥料 [対象]稲類 [分類]指導


[背景・ねらい]最近、消費者の健康・安全志向から有機栽培米の生産が盛んになってきている。また、環境保全の視点から家畜ふん尿の処理が問題になっており、家畜ふん尿の有効利用を図るための技術開発も望まれている。鶏ふんは肥効が高く、取扱い易いため水稲への施用が期待されているが、水稲に対する鶏ふんの肥勃は不明な点が多く、あまり利用されていない。そこで、発酵鶏ふんを有効利用しながら、化学肥料を全量有機物で代替する無化学肥料栽培米の施肥法について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 発酵鶏ふんを有効に利用し、施肥全量を有機物で施用する場合は、基肥には基肥窒素の全量を発酵鶏ふんで施用し、穂肥には穂肥窒素の全量を出穂25日 〜27日前に粒状菜種油粕で施用する(表1,2)。
2 発酵鶏ふんを基肥に施用する場合は、地力が高い圃場では、窒素肥効率を25%にすると玄米の窒素濃度が上昇し食味が低下することから、35%を適用し、地力が低い圃場では25%を適用する。穂肥における粒状菜種油粕の施用量は化学肥料に対する窒素肥効率を100%として算出する(表2,3)。
3 水田圃場における発酵鶏ふんの有機態窒素は、埋設1週間目で15〜19%、最高分げつ期までに20〜24%、収穫期までに27〜32%が分解される(図1)。
4 基肥に鶏を施用すると土壌の酸化還元電位は生育初期にやや低下するが、最高分げつ期には慣行と同等となる(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]

1 福岡県内の砂壌土の水田土壌に適用できる。
2 水稲施肥基準に登載し、無化学肥料栽培米の施肥法として活用する。
3 鶏ふんは十分発酵させたものを用いる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水田における有機物の特性を生かした効率的施用法(2)特性に基づく適正施用法
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成5〜9年)
研究担当者:井上恵子、兼子明、末信真二、荒木雅登
発表論文等:なし