水稲に対する終夜照明被害の品種間差と照明中断による回避
- [要約]水稲の終夜照明による出穂期の遅延程度は「ヒノヒカリ」が最も大きく、減収被害は中晩生種で大きい。「ミネアサヒ」「ほほえみ」は出穂期の遅延程度が最も小さく、減収被害がない。「ヒノヒカリ」の場合に、出穂前5週から出穂前1週まで照明を中断すれば減収被害が回避できる。
- 農産研究所・栽培部・作物栽培研究室 [連絡先] 092-924-2937
- [部会名]農 産 [専門]栽培 [対象]稲類 [分類]指導
[背景・ねらい]
- 農村近辺における住宅、工場等の進出に伴い、道路灯、防犯灯、飲食・遊技場などの夜間照明が増加している。水稲を長日条件におくと出穂期が遅延し、このことが収量にまで影響を及ぼすことは明らかであるが、本県の主要品種に対する影響は調査されていない。そこで、本県の主要品種の照明による被害の品種間差、水稲への被害を回避するための照明中断の時期を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@照明による出穂期遅延の品種間差
- 照明による出穂期遅延の程度は品種間差があり、「ヒノヒカリ」が最も大きく、「ミネアサヒ」「ほほえみ」は最も小さい(表1)。
A減収程度の品種間差
- 極早生、早生品種は出穂期が早いので照明により出穂期が遅延しても減収程度は小さく、照度が15ルックス程度では減収はない。中生品種(ヒノヒカリ)より出穂期が遅い品種は照度が15ルックス程度でも出穂期が4〜21日程度遅れることがあり、安全出穂限界(9月20日)より遅くなると減収が大きくなる(表1)。出穂期の遅延程度が小さい「ミネアサヒ」と「ほほえみ」は、30ルックスでも減収はほとんどない。
B照明の時期と影響の程度
- 「ヒノヒカリ」の出穂期の6週前(7日間)の照明で出穂期が2日遅れ、5週前〜4週前までの照明で出穂期の遅れが4〜8日と影響が最も大きく、2週前まで影響がある(表2)。
C照明中断による被害回避
- 「ヒノヒカリ」は照度が15ルックスの場合に出穂前5週から出穂前1週まで照明を中断すれば出穂期の遅れは4日以内となる(表3)。
D出穂遅延と収量、品質の低下
- 「ヒノヒカリ」で終夜照明の照度が4ルックスの場合は、出穂遅延が4日で減収程度はは1%、品質の低下は1中が1下で許容できる(表4)。
[成果の活用面・留意点]
@水稲栽培技術指針に登載する。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:稲・麦の生育障害の原因解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
- 研究担当者:原田皓二
- 発表論文等:平成7〜8年度福岡県農業総合試験場作物部会夏作試験成績概要書