水稲湛水直播栽培における耐倒伏性,収量及び食味からみた最適な苗立ち密度

[要約]水稲の湛水直播栽培における最適な苗立ち密度は,耐倒伏性,収量性,精米中のタンパク質含有率及び食味からみて80本/u程度である。極端な薄播(20本/u)や密播(200本/u)では耐倒伏性が弱くなり、食味は著しく劣る。

農産研究所・栽培部・作物品種研究室 [連絡先] 092-924-2937
[部会名]農 産 [専門] 栽培 [対象]稲類 [分類]普及

[背景・ねらい]

水稲の湛水直播栽培における適正な苗立ち密度は品種,播種期,播種様式,施肥法などの諸要因によって異なることが知られており,耐倒伏性や収量性からみた適正な苗立ち密度は60〜100本程度であることが明らかにされている。しかし,良食味米が求められているなかで米の食味や理化学的特性をも踏まえた総合的な苗立ち密度は検討されていない。
そこで,水稲の湛水直播栽培法の確立のための基礎的知見を得る目的で,耐倒伏性の優れた直播適応性品種を用いて水稲の苗立ち密度が水稲の生育や収量性および外観品質や食味に及ぼす影響を検討し,最適な苗立ち密度を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@水稲の湛水直播栽培における最適な苗立ち密度は,耐倒伏性,収量性及び食味からみて80本/u程度が最適である。
A苗立ち密度が低いほど出穂期は遅く,稈や根は太くなる。押し倒し抵抗値は40〜80本/uで大きく,耐倒伏性は40〜80本/uで優れ,20本/uや150〜200本/uでは劣る(表1)。
B苗立ち密度が低いほど1株穂数は多くなり,1穂籾数は多くなる。収量は40〜80本/uが優れる(表2,3)。
C玄米品質は80〜150本/uが優れ,20〜40本/uでは乳白米が発生し劣り,耐倒伏性の弱い200本/uでも劣る(表3)。
D精米中のタンパク質含有率は80本/uで低く,食味は80本/uが優れる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
@水稲栽培技術指針に登載し,普及指導資料として活用する。
A耐倒伏性の優れた湛水直播栽培に適した良食味品種(「キヌヒカリ」、「つくし早生」)で得られた結果である。

[具体的データ]


[その他]

研究課題名:直播栽培に適する水稲品種の特性と選定
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:尾形武文,松江勇次
発表論文等:水稲の湛水直播栽培における苗立ち密度が生育や食味に及ぼす影響,日作 九支会,第63号,1997。