水稲の良食味品種「ほほえみ」の良質安定栽培法


[要約]水稲の良食味品種「ほほえみ」を良質安定生産するための移植適期は6月5日前後である。目標籾数は30,000〜32,000粒/uで、施肥量は「日本晴」より基肥量を1kg/10a 程度少なくする。成熟期以前は収量の低下、以後はうす茶米が増加する傾向にあるので、収穫適期の範囲は「日本晴」よりやや狭く、成熟期−3〜+4日を目標とする。

豊前分場・普通作物・野菜研究室 [連絡先] 09302-3-0163
[部会名]農 産 [専門] 栽培 [対象] 稲類 [分類] 普及

[背景・ねらい]

水稲の良食味品種「ほほえみ」の作付拡大と安定生産を図るために、生育特性の解明と良質安定栽培法の確立が求められている。そこで、「ほほえみ」の最適な移植時期、施肥法及び刈取時期の判定法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

@6月20日移植における「ほほえみ」は、登熟歩合の低下によって、「日本晴」より著しく減収し、5月20日移植では品質がやや低下する。このため、「ほほえみ」の移植適期は6月5日前後である。また、移植時期が5月20日から6月20日と遅くなるほど、「ほほえみ」の出穂期及び成熟期における「日本晴」との差はそれぞれ7から3日、12から3日と短くなる(表1)。

A中山間地(標高250m)における「ほほえみ」は、平坦地(標高 10m)よりu当たり籾数が少ないものの、登熟歩合が高く、収量、品質ともに安定して優れる(表1)。

B目標籾数を30,000〜32,000粒/uとした場合、「ほほえみ」の幼穂形成期、穂揃期までの窒素吸収量は、「日本晴」よりそれぞれ1.6〜1.9kg/10a、2.1〜2.3kg/10a少ない(図1、一部デ−タ省略)。また、穂肥量を2+ 1.5kg/10aとして、この目標籾数を確保するために必要な基肥量は4〜6kg/10aであり、「日本晴」の標準基肥量より1kg/10a程度少ない(表2)。

C成熟期以前は精玄米重歩合の低下、成熟期以降はうす茶米が増加しやすい傾向にあることから、「ほほえみ」の刈取適期の範囲は「日本晴」よりやや狭い。収量及び品質を考慮した刈取適期は、成熟期前3日〜後4日頃(日本晴:同前4日〜後5日)である(表3、図2)。

[成果の活用面・留意点]
@水稲栽培技術指針に登載して、普及指導上の参考とする。

A籾数が過剰になると、登熟歩合の低下や乳白米の発生等による品質低下を招くので、多肥栽培は避ける。
[具体的データ]



[その他]
研究課題名:水稲早生新品種「ほほえみ」安定栽培法
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:大隈充子,森藤信治,濱地勇次
発表論文等:平成7〜8年度 夏作試験成績概要書