水稲に対する粒状菜種油粕の全量施用法


[要約]水稲「ヒノヒカリ」、「ちくし15号」において、施肥窒素の全量を粒状菜種油粕で施用する場合は、化学肥料に対する窒素肥効率を基肥で 70%、追肥で 100%とし、基肥は移植7日前に、追肥は慣行1回目より7日前に全量を1回で施用する。水管理は、移植後から中干しまで浅水とする。

生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室 [連絡先] 092-924-2939
[部会名]生産環境 [専門]肥 料 [対 象] 稲 類 [分 類] 指 導
[背景・ねらい]
最近、米の高付加価値米の一つとして、有機栽培米の生産が盛んになってきている。 その中で菜種油粕は安価で取り扱い易いことから、盛んに施用されているが、基肥時の菜種油粕の施用は土壌の還元化やそれに伴う生育障害物質の発生で初期生育が抑制され易い。このため、基肥の菜種油粕の施用量は窒素施肥量の半量を上限とするのが安全であることを明らかにした(平成2年度農業関係試験研究成果)が、有機栽培米として、より付加価値の高いブランド米を生産するためには、施肥全量を有機質肥料で施用する必要があり、その条件下で安定的に生産できる施肥法の確立が求められている。そこで、窒素の全施肥量を粒状菜種油粕で施用するための施用時期や施用量、水管理法について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@)窒素の全量を粒状菜種油粕で施用する場合、化学肥料に対する窒素肥効率を基肥で70%、追肥で100%とし、基肥は移植7日前に、追肥は慣行1回目より7日前に全量を1回で施用する。水管理は、移植後から中干し時期まで1〜3cmの浅水で管理すると、慣行(全量化学肥料)とほぼ同等の収量、品質が得られる(表1、表2)。
Aこの施用法では、初期生育は慣行施肥よりやや劣るが最高分げつ期には同等の生育を示し、成熟期には対照区より穂数が多くなる。葉色は、7月上旬まで慣行施肥より薄いが、最高分げつ期から8月中旬までは濃く推移する。収量構成要素では、慣行施肥よりm2当たり籾数は増加するが、千粒重は減少する(表1、表2)。
B粒状菜種油粕を基肥に施用すると、土壌の還元化が慣行施肥より進む。しかし、粒状菜種油粕を移植7日前に施用し、浅水で管理すると、移植前日施用や深水管理する場合に比べて土壌の還元化が改善され、水稲の窒素吸収量が多く、施肥窒素利用率も高くなる(表3、表4)。
[成果の活用面と留意点]
@砂壌土で日減水深2〜3cm程度の水田土壌に適用できる。
A浅水管理を行うと一部、田面が露出し雑草が多発する恐れがあるため、圃場の均平化に努める。

[具体的データ]



[その他]
研究課題名:水田における有機物の特性を生かした効率的施用法
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成5〜8年度)
研究担当者:井上恵子、兼子明、末信真二、荒木雅登