[要約]
鉱害復旧田における普通期栽培の「夢つくし」に対し、シグモイド型の緩効性肥料(緩効率50%)を全量基肥施肥すると、分施を行う慣行施肥とほぼ同等の収量をあげることができる。
鉱害試験地
[連絡先] 09494-2-0245
[部会名] 農産
[専門] 肥料
[対象] 水稲
[分類] 指導
[背景・ねらい]
筑豊地域の鉱害地帯では、労働力の高齢化や兼業化、水田の鉱害復旧に伴う地力の低下など大きな問題をかかえ、水稲栽培における省力的栽培技術の開発が強く望まれている。そこで、今後作付拡大が予想される「夢つくし」に対し緩効性肥料を利用した全量基肥施肥について検討し、水稲施肥の省力化や施肥窒素の利用率向上を図る。
[成果の内容・特徴]
@リニア型の緩効性肥料は1回目の穂肥時期まで(6月15日〜7月28日)に施肥窒素の73
%〜86%が溶出し、それ以降の溶出は少ない。一方、シグモイド型の緩効性肥料は1回目の穂肥時期以降(7月28日〜9月22日)に施肥窒素の47%〜69%が溶出する(表1)。
Aシグモイド型の緩効性肥料(緩効率50%)を全量基肥施肥すると、10%減肥でも施肥窒素(窒素施用量
7.6s/10a)の利用率は慣行施肥より向上し、慣行施肥とほぼ同等の収量をあげることができる(表2、3)。
Bリニア型の緩効性肥料では、慣行施肥より精玄米千粒重が軽くなり、収量は慣行施肥より3%〜8%減収する(表2)。
C平成5年のような低温寡照条件下では、緩効性肥料の溶出が全般的に遅くなる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
@熟田化した復旧田に対する肥培管理の指導資料とする。
A緩効性肥料の窒素成分の溶出時期は気象変動により変化するが、追肥は行わない。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:緩効性肥料を用いた「夢つくし」の一回全量施肥
予算 区分:経常
研究 期間:平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者:渡邉敏朗、豊田正友、三井寿一
発表論文等:平成5〜7年度鉱害試験地試験成績概要書