[要約]
一筆の水田における紋枯病の発病株率は水田の畦畔部を100株調査することで従来法と同程度に推定できる。地域の平均的な発病株率を推定するためには7筆程度の入・排水口付近を調査することでも推定できる。
生産環境研究所・病害虫部・普通作物病害虫研究室
[連絡先] 092−924−2938
[部会名] 農産
[専門] 作物病害
[対象] 稲類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
紋枯病は発生が少ない場合は圃場間差が大きく、また圃場内の分布も偏りが大きいので発生予察調査に当たっては従来から水田内部を平均的に5カ所計100株調査することが推奨されている。しかし、この調査法では労力を要するため簡易な調査法の開発が望まれている。そこで、圃場内に入ることなく紋枯病の発病株率を把握できる簡易な手法を確立し、効率的な防除を行うための資料とする。
[成果の内容・特徴]
@紋枯病の発病株率が約10%の少発生の場合、一筆の水田の発病株率を推定するためには畦畔部を100株程度調査すればよい(図1)。また、地域の発病株率を推定するためには7筆程度の入・排水口付近を60株程度調査することでも推定できる(表1)
A病斑高率は水田の場所による差は小さいので、畦畔沿いを10株程度調査すればよい(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
@紋枯病の発生予察法の資料として防除基準に掲載する。
A少発生の場合は畦畔部での発病株率が大きく偏る場合あるので、水田の両側の畦畔部での発病株率を調査することが望ましい。
B発病株率40%以上の多発生圃場では発病株は万遍なく分布している(堀ら、1971)ので、畦畔付近などの部分調査で病株率の推定ができる。
[具体的データ]
図1発生予察調査基準による調査法(従来法)と畦畔部での調査法(今回)との比較(平成6年)
注)@●は従来法の、Oは今回調査法の平均値、縦棒は95%の信頼区間
A外:畦畔部の2条のうち畦畔側の条、
内:畦畔部の2条のうち畦畔部から2番目の条、
全:水田内部5カ所(発生予察基準)。
なお、1筆の水田の長辺を2カ所調査したため2カ所の「外」と「内」を示した。
B調査品種:コシヒカリC調査時期:平成6年7月8日(出穂前約7日)
表1 コシヒカリ圃場の内部と入・排水口における紋枯病
発病株率の関係(平成6年)
注)@一は入・排水口の場所が不明であった。
A上限、下限は95%信頼限界を示す(データを
角変換後計算した値を百分率に戻した。)。
[その他]
研究課題名:紋枯病の簡易予察法
予算区分 :国庫(植物防疫)
研究期間 :平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:松本幸子・中村利宣
発表論文等:平成4〜6年度生産環境研究所病害虫部普通作物病害虫関係試験成績概要書