水田土壌の地力窒素発現予測における可分解性窒素量の簡易推定法


[要約]
  水田土壌からりん酸緩衝液で抽出された窒素量を測定することで可分解性窒素量を求めることができ、反応速度論に基づいた方法により、水田からの地力窒素発現量を簡易に推定できる。

生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室
[連絡先]  092−924−2939
[部会名]  農産
[専門]    肥料
[対象]    稲類
[分類]    指導


[背景・ねらい]
 水稲の窒素栄養において水田土壌からの地力窒素は大きな役割を占める。地力窒素発現の推定は、金野らの方法にしたがえば土壌固有の可分解性窒素量と速度定数からなるパラメータと土壌温度による計算で行うことができる。しかし、パラメータの測定は培養法という手間と時間のかかる方法で行わなければならない。最近、小川らはりん酸緩衝液による可分解性窒素の簡易推定法を提案した。この方法を利用して、より簡便に地力窒素発現を評価する方法について検討する。

[成果の内容・特徴]
@りん酸緩衝液による土壌抽出液の全窒素量を測定することにより、地力窒素発現量推定式のパラメータとなる可分解性窒素量を推定することができる。具体的な方法は以下の通り。
風細乾土10gに1/15Mりん酸緩衝液(pH7)50ml添加→1時間振とう→No.6濾紙で濾過
              →濾液を一定量とり、ケルダール法により窒素量を定量。
              →得られた窒素量(x mg/100g)から次の式により可分解性窒素量(y mg/100g)を求める。 y=2.3x−2.6 r=0.915(図1)

A可分解性窒素量、土性により推定した速度定数(表1)、作土深、容積重および地温データを金野らの方法に基づいたパソコンのプログラムに入力することにより、地力窒素発現量の推定が可能である。(図2)

Bさらに、プログラムに水稲品種の時期別最適窒素吸収量および窒素利用率のデータを組み込むことで地力窒素発現量に対応した窒素施用量を計算することができる。(図2)

[成果の活用面・留意点]
@地力保全測定診断の手引に登載し、良食味品種の施肥改善に活用する。

A灰色低地土の水田土壌に適用する。


[具体的データ]

  表1 各土性と速度定数(25℃)



    図1 緩衝液抽出窒素量と可分解性窒素量の関係




            図2 パソコンを用いた窒素発現量の推定


[その他]
研究課題名:地力窒素発現予測システムの確立 
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年) 
研究担当者:末信真二、山本富三、井上恵子、角重和浩、兼子明
発表論文等:平成4年〜6年度化学部春夏作試験成績概要書