[要約]
コシヒカリの早期栽培において、緩効性肥料を利用した1回全量施肥栽培 は、速効性肥料の全層施肥に比較して収量は5%程度少ないが、全層施肥で10〜15%、側条施肥で 20%程度減肥すれば、品質への影響なく栽培が可能である。
農産研究所・栽培部・作物栽培研究室
[連絡先] 092-924-2937
生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室
[連絡先] 092-924-2939
[部会名] 農産
[専門] 栽培
[対象] 稲類
[分類] 指導
[背景・ねらい]
稲作の省力化のため早期栽培においても施肥労力の節減が求められている。そこで、緩効性肥料を利用して施肥を基肥の1回のみで行う1回全量施肥栽培に着目し、全層施肥及び側条施肥の場合の施肥法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@緩効性肥料を用いた一回全量施肥は、慣行施肥法(速効性肥料の全層施肥)に比較して登熟歩合が低く、千粒重がが小さい傾向がみられるため目標収量を5%程度低く設定する必要がある。目標頴花数は慣行(30,000〜32,000/u)と同程度である(表1、図1)。
A全層施肥では葉色は慣行施肥法よりも濃く経過し減肥しなかった場合には穂数頴花数ともに多く、玄米窒素濃度はやや高くなる。頴花数収量品質からみて、全層施肥の場合の減肥率は10〜15%程度が適当である(表1)。
B側条施肥では慣行施肥法に比較して葉色の低下は早く、減肥率16〜24%では穂数は多いが、玄米窒素濃度は慣行と同程度である。頴花数収量品質からみて、側条施肥の場合の減肥率は慣行の全層施肥の20%程度が適当である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
@水稲施肥基準に登載して指導上の参考とする。
A緩効性肥料は種類により肥効の発現パターンが異なるので、LPD70に類似したタイプの肥料を用いる。
[具体的データ]
表1 施肥法と生育、収量構成要素、収量、品質
注)@平成5年、6年平均、登熟歩合以降は6年の値(H5年は台風と長雨で全区、著しく
倒伏した)。
A品種はコシヒカリ、4月20〜21日稚苗機械移植。
B肥料はLPコートD70(速効性30%、100日タイプ70%)、慣行は速効性肥料。
C減肥率は慣行に対する比率。
D葉色値の()は穂肥施用後の値。
E倒伏程度(6年)は無〜微で問題にならなかった。
図1 u当たり頴花数と玄米重
注)表1の試験区に墓肥量を増減した区を加えた。
[その他]
研究課題名:早期栽培における側条1回全量施肥技術の確立
予算 区分:経常(一部受託)
研究 期間:平成6年度(平成5〜7年)
研究担当者:田中浩平、兼子 明、山本富三
発表論文等:平成56年度 農産研究所 夏作試験成績概要書