準奨励品種水稲「ほほえみ」の品種特性


[要約]
 水稲「ほほえみ」は「日本晴」に比べて成熟期がやや早い早生種で、穂発芽性が難、耐倒伏性は優り、いもち病抵抗性は中で、収量はやや少収であるが、食味は「コシヒカリ」と同程度の極良食味品種である。

農産研究所・栽培部・作物品種研究室
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豊前分場・普通作物・野菜研究室
[連絡先]  09302-3-0163      
筑後分場・普通作物研究室
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[部会名]    農産
[専門]      育種
[対象]      稲類
[分類]      普及


[背景・ねらい]
  現在、水稲の早生種には「日本晴」があるが、近年、消費者の食味に対する嗜好は高レベルとなっているため、現在の「日本晴」の食味レベルでは不十分である。一方、早生種に良食味品種がないことから、主食用品種における早生種の占める比率が極端に低下し、適期作業・危険散(気象災害や病虫害の発生防止)及び経営規模の拡大や共乾施設の効率的利用を図るうえから問題となっている。 
  このような背景のもとで早生の良食味水稲品種が強く要望されている。そこで早生系統「ほほえみ」について福岡県での品種特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
 準奨励品種水稲「ほほえみ」(交配親:愛知52号/ミネアサヒ)は「日本晴」に比べて次のような特性を有する。
@稈長はやや短く,穂数はやや多い。草型は中稈偏穂数型で,成熟期の熟色はやや赤味(あかね色)を呈する。

A出穂期および成熟期はやや早い早生種であるが,出穂期の年次間変動が大きい。

B穂発芽性は難であり,また,耐倒伏性は勝る。

Cいもち病抵抗性遺伝子型は「Pi-i, Pi-a」をもつと推定され,葉いもち及び穂いもち圃場抵抗性は「日本晴」並の中である。

D収量はやや劣るが,「ミネアサヒ」よりやや優る。

E玄米品質は「日本晴」並で,千粒重は軽い。

F食味は明らかに優り,「コシヒカリ」と同程度の極良食味である。特に,食味と理化学的特性は年次間や産地間差が小さく,極めて安定している。

[成果の活用面・留意点]
@県内の山ろく〜山間地を中心に普及を図る(平成7年3月,準奨励品種に採用)。

A感光性が低いため,気温の高低による生育ステ−ジの変動が大きい。出穂・成熟期は早植や生育期間中の気温が高温で経過した場合は日本晴より早くミネアサヒに近くなり,逆に晩植や生育期間中の気温が低温で経過した場合では日本晴より遅くなる特徴があるので,幼穂長や積算 C温の調査を行って適切な肥培管理や適期収穫に努める。

B耐倒伏性はやや強であるが,良食味維持のため極端な多肥栽培は避ける。


[具体的データ]

          表1 生育、病害及び収量(普通期、標肥栽培)

 注)@数値は平成3〜平成6年度4カ年の平均値。但し、豊前分場、筑後分場は平成4〜6
    年度3カ年の平均値。
   A移植時期:農産研究所は6月17〜18日、豊前分場は6月15日、筑後分場は6月
    22日。
   B倒伏、穂いもちの発生程度:0(無)〜5(甚)の6段階で表示。
   C検査等級:1(1等ノ上)〜9(3等ノ下)の9段階で表示。


                    表2  食味試験結果

 注)@食味の基準米:コシヒカリ。
   A*:5%水準で有意差あり。


[その他]
研究課題名:水稲奨励品種決定調査
予算 区分:国庫(種子法)
研究 期間:平成6年度(平成3〜6年)
研究担当者:松江勇次、尾形武文、住吉強、大隈充子、福島祐助
発表論文等:平成6年度農産研究所夏作試験成績概要書