水稲新品種候補系統「ちくし15号」の育成


[要約]
 水稲「ちくし15号」は「日本晴」と比較して、成熟期がやや遅い“早生”に属する“短稈、中間型”の粳種である。倒伏に強く、収量性が優れ、玄米品質は同程度で、極良食味である。いもち病及び白葉枯病圃場抵抗性は“やや弱”である。     

農産研究所・育種部・水稲育種研究室
[連絡先] 092-924-2937
[部会名]  農産
[専門]    育種
[対象]    稲類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  近年、消費者の良食味米への志向が高まり、米の産地間競争が一段と激化している。その中で、平成5年に本県で育成された極早生の水稲新品種「夢つくし」は、良食味の県民米として大きな期待が寄せられている。
  その一方で、労働力の集中化を避け、稲作の規模拡大を可能とするためには、早生種の作付割合を高めて作期を分散する必要がある。しかし、現在作付されている早生種の「日本晴」、「黄金晴」は食味が不十分であることから、これらの品種に替わる良食味品種の要望が極めて強。
  そこで、良質、安定多収で、栽培特性の優れた早生、良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
「ちくし15号」は、昭和63年に福岡県農業総合試験場において、早生、強稈、良食味品種の育成を目標に、良食味品種「農林22号」を母、強稈、良食味品種「キヌヒカリ」を父として人工交配した組合せから育成された。平成5年度以降、奨励品種決定基本調査に供試し、栽培特性 A食味及び地域適応性について検討を加え、平成7年度にはF8になる。本系統の特性は「日本晴」と比較して、以下のとおりである。

@出穂期及び成熟期はやや遅い“早生”に属する粳種である。

A稈長は短く、穂長は同程度、穂数はやや少ない“中間型”である。

B止葉の葉色はやや濃く、直立性は“やや立”である。

C耐倒伏性は優れ、“強”である。脱粒性は“難”、穂発芽性は“易”である。

Dいもち病真性抵抗性遺伝子“Pi-i”をもつと推定され、圃場抵抗性は葉いもち、穂いもち及び白葉枯病ともにやや弱く、“やや弱”である。

E玄米は中粒で、千粒重はやや重い。品質は同程度で、収量性は優れる。

F食味は明らかに優れ、「コシヒカリ」と同程度の“極良食味”である。

[成果の活用面・留意点]
@本系統は平成7年7月頃に品種登録出願、平成8年2月頃に福岡県奨励品種査定審議会に諮問予定である。

A本系統は本県内の山麓地から平坦地の「日本晴」、「黄金晴」等に替えて普及を図る。

Bいもち病抵抗性はやや弱いので、過度の施肥を避けるとともに、いもち病の適期防除に努める。

C穂発芽しやすいので、適期刈取りに留意する。


[具体的デ−タ]

           表1  「ちくし15号」の特性


[その他]
研究課題名:良食味品種の育成
予算 区分:県特
研究 期間:平成6年度(昭和63〜6年)
研究担当者:濱地勇次・今林惣一郎・大里久美・西山壽・吉野稔・川村富輝 
発表論文等:平成7年度水稲新品種決定に関する参考成績書「ちくし15号」