水稲の打ち込み式湛水土中点播栽培における出芽・苗立ち向上のための初期管理技術

[要約]水稲打ち込み式湛水土中点播栽培では、播種当日に代かきを行い、打ち込み回転数800〜1400rpmで播種することにより、出芽深度が確保できる。さらに播種後から出芽揃い期までの落水管理によって浮苗が防止され、苗立ちが向上する。

農産研究所・栽培部・作物栽培研究室
筑後分場・普通作物研究室

連絡先
 

092-924-2848
0944-32-1029

部会名
 

  農  産
 

専門
 

  栽  培
 

対象
 

稲 類
 

分類
 

普 及
 
 
[背景・ねらい]
 水稲の直播栽培における出芽・苗立ちの安定化は、適用性品種の選定や雑草防除とともに、安定生産のための重要課題の一つである。
 現在までに開発された直播栽培における播種方式は多数あるが、打ち込み式湛水土中点播方式は、苗立ちが株状となり、受光態勢や耐倒伏性に優れるため、直播水稲の安定生産技術として期待されている。
 そこで、出芽・苗立ちの安定化を図るための代かき条件、播種時の水量、打込み速度並びに播種後の水管理など初期管理技術を確立する。(要望機関名:飯塚普(H8))
 
[成果の内容・特徴]
1.出芽深度の確保による浮苗の防止と苗立ち率の向上を図るためには、代かきを播種当日に、移植栽培の慣行よりやや少ない水量(土壌面が70〜80%露出する程度)で行う。播種時の水量が少ない場合は土壌が硬くなり、播種深度が浅くなる(表1)。
 
2.播種時の打ち込み回転数は800〜1400rpmとする。前作の麦わらをすき込んだ場合は1400rpmとし、出芽深度を確保する(表1)。
 
3.浮苗を防止し、苗立率を向上させるためには、播種直後から播種9日後頃(出芽揃い期)まで落水管理とする(表3)。
 
 
[成果の活用面・留意点]
1.水稲の打ち込み式湛水土中点播栽培の普及指導資料として活用できる。
2.播種当日の代かき時の水量は移植慣行の場合より少なくし(半分程度)、過剰にならないよう留意する。  
3.麦跡では、コンバインによる切断わらをむらなく広げてからすき込んでおく。
4.播種後から出芽揃い期まで落水管理とするが、雑草の発生が多い場合には早めに入水して、除草剤を散布する。
5.スクミリンゴガイ侵入田における水管理は、平成9年度成果情報を参照のこと。
 
[その他]
研究課題名:水稲点播直播の実用化技術
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成11年度(平成9〜11年)
研究担当者:福島裕助、田中浩平、陣内暢明、大賀康之
発表論文等:水稲湛水直播栽培における出芽・苗立ち安定化のための初期水管理.日作九支報、第65号、1999.