水稲の湛水直播栽培におけるカルパー粉衣籾の長期保存方法

[要約
 水稲湛水直播栽培において、カルパー粉衣籾1ヶ月程度保存するには、カル パーを粉衣後風乾し、10℃で密封保存することで、貯蔵中の幼芽伸長もなく、機械播種による出芽率も70%程度得られる。

 筑後分場・普通作物研究室   [連絡先]0944-32-1029
  [部会名]農 産    [専門]栽 培  [対象]稲 類  [分類]普 及
 
背景・ねらい
 水稲の湛水土中直播栽培では、出芽苗立を良好にするため、カルパーを粉衣する作業が必要である。現在、カルパーの粉衣作業は播種前日あるいは前々日に行われており、稲麦二毛作地帯では麦収穫、カルパー粉衣と播種の作業競合が起きている。カルパー籾を1ヶ月程度保存することができれば、作業の競合が解消される。そこで、保存温度及び保存量の検討を行い、1ヶ月程度の保存方法を明らかにする。(要望機関名:飯塚普(H8))
 
成果の内容・特徴
 1 10℃では、28日間保存しても幼芽の伸長はみられない。28日間保存したカルパー籾の手播きによる土中の出芽率は、1日保存と比べると7%程度の低下はみられるが、80%程度は確保される(表1)。機械播種においても、27日間の保存で70%の出芽率が得られる(表2)。
 2 15℃では保存期間が7日を越えると種籾の幼芽伸長が確認される。14日では伸長した幼芽が機械播種中に損傷し、28日では幼芽の伸長がさらに進み、播種機の中で幼芽が絡み合い詰まるため、作業に支障をきたす(表1)。
 
成果の活用面・留意点
 1 水稲栽培技術指針に登載し、普及指導上の参考資料として活用できる。
 2 種子の催芽は鳩胸前とし、カルパーを2倍量粉衣後、半白乾状態まで風乾させ、ビニル袋に入れて密封する。
 3 10℃で1ヶ月程度保存したカルパー籾を使用する場合、播種量は1割程度増やす。
[具体的データ]
 
 
[その他]
研究課題名:筑後重粘土地域に適する水稲直播品種の選定
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成10年度(平成9〜10年)
研究担当者:石丸知道、福島裕助、許斐健治
発表論文 :平成9〜10年度 福岡県農業総合試験場作物部会 夏作試験成績概要書