大区画ほ場における「つくし早生」の湛水土中直播栽培の評価

[要約]
 大規模稲作農家の1ha程度の大区画ほ場における、直播適応性が高い「つくし早生」を用いた湛水土中直播栽培では、ha当たりの労働時間は72時間で20〜30a規模での移植栽培の70%以下と省力的であり、移植栽培と同等の収量品質が得られる。

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 企画経営部・経営情報課           [連絡先]092-924-2972
 鉱害試験地                [連絡先]09494-2-0245
  [部会名]農  産 [専門]栽 培  [対象]稲 類  [分類]普及
 
[背景・ねらい]
 水稲湛水土中直播栽培における問題点として、出芽苗立ちの不安定性、雑草防除の困難性及び倒伏による収量品質の低下等があげられる。そのため、直播適応性品種の選定、出芽苗立ちを安定させる初期水管理法の確立、直播用除草剤の選定、効率的な施肥法の確立等の技術開発試験を実施し、個別技術の確立を図ってきた。ここでは、水稲直播栽培の普及定着化を図るため、現地の大区画ほ場において体系化した新技術の有効性を「つくし早生」を用いて実証する。(要望機関名:飯塚普(H7)(H8))
                      
[成果の内容・特徴]
 1 大規模稲作経営農家の大区画ほ場を用い、湛水土中直播栽培に関する新技術の現地実証を行った結果、移植栽培と同等の収量・品質が得られた(表1)。
 
 2 1haの大区画ほ場で直播栽培した場合の作業時間は71.8時間/ha、一般的な20〜30a区画で移植栽培した場合の作業時間は 104.7時間/haであり、直播栽培での作業時間は移植栽培の70%以下と省力効果が高い(表2)。
 
 3 直播栽培における省力化は、移植栽培での育苗作業(播種、水管理)、移植、穂肥散布が不要であることによる作業時間の短縮である。また、直播栽培では補助作業員は最大2人であることも作業員確保の面で有利であり、移植時における苗運搬作業が不要となり、軽作業化が図られる(表2)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 稲作経営の規模拡大等にともなって直播栽培を導入する場合の普及資料として活用できる。
 
[具体的データなど]
 
[その他]
 研究課題名:大規模経営における水稲・麦類二毛作体系の省力、低コスト技術と経営的評価・モデル化  2)鉱害復旧地域における新技術の現地実証と技術的評価
 予算区分:国庫(地域基幹)
 研究期間:平成10年度(平成6〜10年)
 研究担当者:陣内暢明、中原秀人、岩渕哲也、原田皓二、大賀康之
 発表論文等:平成10年度 福岡県農業総合試験場作物部会 夏作試験成績概要書