湛水土中直播水稲の出芽・苗立ち向上のための水管理と雑草防除法

[要約]
 水稲湛水土中直播栽培において、播種後自然落水して、5日間程度落水する水出芽により苗立ちが向上する。落水管理によって雑草の発生が増加するが、播種10日(ノビエ2葉期)の除草剤処理により湛水管理と同等の除草効果が得られる。なお、落水期間が長い強度の水管理では、田面に亀裂が生じ、漏水が問題となる。

 農産研究所・栽培部・作物栽培研究室  [連絡先]092-924-2848
[部会名]農  産 [専門]栽 培  [対象]稲 類 [分類]普及
 
[背景・ねらい]
 湛水土中直播栽培では出芽・苗立ちが土壌や水管理の影響を受けやすく、安定栽培のためには出芽・苗立ちの確保が最も重要である。そのため出芽・苗立ちが向上する播種後の水管理法について土壌の種類と落水条件について検討する。さらに、落水出芽に対応した雑草防除法を明らかにする(要望機関名:飯塚普(H7)(H8))。
 
[成果の内容・特徴]
 1 湛水状態のままでは両土壌とも苗立率が低く、特に埴土での低下程度は大きいが、播種後5日程度の落水出芽によって苗立率が向上するとともに浮苗の発生も軽減され  る(表1)。
 
 2 落水期間が長くなるほど苗立率は向上するが、過度の落水期間の延長は田面に亀裂を生じ、1日当たり減水深が大きく、漏水が問題となる。落水出芽の水管理法としては、播種後に自然落水し、落水期間を5日間程度とし、その後は湛水状態を保つ方法  が適する(表2)。
 
 3 落水出芽することによってノビエ等の雑草が増加する。落水前に初期除草剤を処理するか、落水処理後のノビエ2葉期までに一発処理除草剤を処理することにより十分な除草効果が得られる(表3)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 専用播種機(土中条播:播種深度約1cm)を用いた湛水土中直播栽培に適用できる。
 2 出芽・苗立ちの向上と雑草対策を図る際の資料として活用できる。
 1 スクミリンゴガイの発生地域では潤土管理が長くなるため、播種直後及び水稲3葉期以降の除草剤処理が必要となる。
 
[具体的データ]
 
[その他]
 研究課題名:播種・施肥・雑草防除などの省力管理法
 予算区分:国庫(地域基幹)
 研究期間:平成10年度(平成7〜10年)
 研究担当者:田中浩平、岩渕哲也、陣内暢明、荒木雅登、原田皓二
 発表論文等:水稲湛水直播栽培における出芽・苗立ちの安定化のための初期水管理
       日作九支報、第65号、1999。